米ドル円 往来相場で有効なストラングル売り戦略 魅力と欠点
米ドル円の往来相場を狙うのに有効なストラングル売り戦略をご紹介します。
ストラングル売り戦略は、往来相場の多いFXに向いています。
「往来相場を狙う」という戦略
FXオプションには、「一定値幅の範囲であれば利益になる」という仕掛け方があります。
これは、オプションの教科書で「ストラングルの売り戦略」と呼ばれています。
為替相場は往来相場7割と言われるほど一定値幅への変動が多い傾向があります。
その意味で、この「ストラングルの売り戦略」は、FX投資家にとっては非常に有効な一手にもできる可能性があります。
知っておいて損はない戦略ですので、紹介させていただきます。
この仕掛けは、2つのFXオプションを使います。
- 現在値よりも高値のコールオプション売り
- 現在値よりも安値のプットオプション売り
2つの「売り」ポジションを組み合わせることで、利益を狙う「往来相場の値幅を設定」していきます。
実際の値に合わせて仕掛け方をご説明します。
ケース1 4円幅の往来を想定したケース
現在値から上下2円・合計4円幅での往来相場を想定した仕掛けはこんな感じで行います。
この画像をご覧ください。この画像時点の米ドル円値は2月27日で110.40円のときのものです。
薄青色部分が仕掛けるポジションです。
ここでポジションを作ったとすると、こういう内容になります。
- 109..50円 コールオプション売り プレミアム0.679
- 111.50円 プットオプション売り プレミアム0.359
コールオプション売り・プットオプション売りともに「利益限定・損失限定なし」という性質を持ちます。
この2つのポジションを仕掛けたときに最大利益となるプレミアム受取ができます。
プレミアム受取額:0.679+0.359=1.038
- 1万通貨で10,380円
- 10万通貨で103,800円
仮に10万通貨仕掛けたとしましょう。
この103,800円の受取が満額利益として確定するには、権利行使日の米ドル円が一定の値幅に入っている必要があります。
- コールオプション売りは111.50円よりも下落すれば利益
- プットオプション売りは109.50円よりも上昇すれば利益
この2つを合わせた「109.50−111.50円の範囲内」が103,800円の満額利益を受け取れる条件です。
2つのポジションの権利行使価格の中に入っている場合は、このストラングル戦略売り仕掛けでの最大利益が得られます。
「最悪でも最終利益にできる損益分岐点」にすると、受取ったプレミアム分の値幅を考慮できるので、大分拡がります。
- 上げ相場:111.50+1.038=112.538円
- 下げ相場:109.50−1.038=108.462円
最悪でも利益を出せる損益分岐点としての値幅は、108.462−112.538円となります。
112.538−108.462=4.076円
約4.076円の往来相場であれば最終利益にできるポジションということになります。
4円だと安心できない、もっと広い値幅で仕掛けたい、そう考える方もいるでしょう。
もう少し広く取るとどうなるかも参考までにご紹介しましょう。
ケース2 もう少し広い値幅にした場合
往来相場の値幅をもう少し広くする方法自体は簡単です。
- コールオプション売りをもっと高いところで仕掛ける
- プットオプション売りをもっと安いところで仕掛ける
これだけだからです。
この画像は、先程同様に2月27日の米ドル円110.40円時点のものです。
先程と同じ手順で内容を確認していきましょう。
- 112.50円 コールオプション売り プレミアム0.138
- 108.50円 プットオプション売り プレミアム0.419
この2つのポジションを仕掛けたときに受け取れるプレミアム額はこうなります。。
プレミアム受取額:0.138+0.419=0.557
- 1万通貨で5,570円
- 10万通貨で55,700円
仮に10万通貨仕掛けたとします。
この55,700円の満額利益として確定するための値幅は、先程の仕掛け時の権利行使価格の範囲内です。
つまり、「108.50−112.50円の範囲内」で約4円の往来相場の値幅内であれば55,700円の満額利益が確定します。
ケース1に比べると2円幅⇒4円幅ですので満額利益を撮れる可能性は高くなりました。でも、満額利益自体も半分になっています。
先程同様に「最悪でも最終利益にできる損益分岐点」も計算してみましょう。
- 上げ相場:112.50+0.557=113.057円
- 下げ相場:108.50−0.557=107.943円
最悪でも利益を出せる損益分岐点としての値幅は、107.943−113.057円となりました。
113.057−107.943=5.114円幅
約5.114円の往来相場であれば最終利益にできるポジションということになります。
ケース1とケース2 どちらが有利か
ケース1とケース2の最終結果を見比べてどう思われたでしょう。
- ケース1:約4.076円の往来相場で最大利益は103,800円
- ケース2:約5.114円の往来相場で最大利益は55,700円
最終利益を確保できる往来値幅は1円違います。
それに対して最大利益は半分になってしまっています。
これを「安全性重視だからケース2でいく」とするか「バランス的にケース1」にするかなどは、投資家それぞれの判断で違ってくるところです。
ちなみに、権利行使日を数カ月先にすれば時間的価値の関係でプレミアムも高くなります。
なので、さらに広い値幅を対象とした「ストラングルの売り戦略」も可能になります。
往来相場10円幅もできないことはありません。
この辺は、仕掛ける前にいろいろと計算しながらやってみるのをお勧めいたします。
ストラングルの売り戦略の欠点 大きな変動相場では損失になる
このストラングル戦略の弱点は、相場が大きく動いたときです。
- 上げ2.5円・下げ2.5円・合計5円の往来相場で設定
- 実際には10円以上上昇した。
こういう場合は、2.5円を超えた部分が損失になります。
- 10円動いたときの損失:2.5円ー10円=−7.5円
10円・20円と大きな動きをする時期にストラングル戦略の仕掛けを入れると大きな損失になることもあります。
対処法は、大きく2つあります。
- 単純に損きりで対応
- FXの買いポジション・売りポジションをと組み合わせる。
などです。
単純に損きりするというのはFXと同じです。
Fオプションでも途中決済ができるので、ポジションをクローズしてストラングル戦略を終了させます。
これとは別に、FXと組み合わせるという選択肢もあります。
例えば、ストラングル戦略を仕掛けていて、大きな上げ相場が始まった時はFXの買いポジションを同数量入れておくというのも有効です。
- ストラングル戦略の損失
- FX買いポジションの利益
上げ相場が続くようであれば、この2つが損益相殺されてくれます。
この辺は、行き当たりばったりでやるのはよくありません。
ストラングル戦略を仕掛けるときに、「不利な展開になったときの対処」としてルール化しておくことをおすすめします。
FXオプションからのスワップ投資 目次
- 第1回:FXオプションを使ってスワップポイント投資の安全性を高めた運用法
- 第2回:スワップポイント生活 低リスク+含み損減とできる方法実行中
- 第3回:FXオプション注文画面の見方「権利行使価格」「権利行使期日」「プレミアム」の仕組み
- 第4回:FXオプション プレミアム売買の仕組み
- 第5回:「途中決済」「スポット」「キャッシュ」の違い FXオプション決済方法
- 第6回:コールオプション買い「損失上限あり・利益上限なし」はこう使う
- 第7回:コールオプション売り「利益上限あり・損失上限なし」はこう使う
- 第8回:プットオプション買い 暴落相場をリスク限定で攻める有効な一手
- 第9回:プットオプション売り FXよりも安値でポジションが作れる仕組み
- 第10回:FXオプションからのスワップ投資 概観
- 第11回:スワップポイント生活の新しい形 手順1〜4
- 第12回:【準備】FXオプションからのスワップ投資 売買ルール編
- 第13回:【運用通貨選び】高スワップポイント手動は失敗の元
- 第14回:【運用資金目安】「リスク管理のための保有数量基準」について
- 第15回:【仕掛け方 3つの型】「一の型」「二の型」「三の型」考え方と基準
- 第16回:【FXオプション⇒FX変換後の運用ルール】 5つの攻め方
- 第17回:ポジション増のタイミング
- 第18回:FXオプション 運用上重要な基本事項 まとめ
- 第19回:「損するかもしれないリスク」と「大損するリスク」FXオプションで確実に軽減する方法
- 第20回:FXオプション 実践者が感じる4つのデメリット
- 第21回:「損失限定・小資金で勝負」「上げ相場でも下げ相場でもスワップ投資」
- 第22回:往来相場を狙うストラングル売り戦略 魅力と欠点
- 第23回:大きな変動相場を取るストラドル買い戦略 短期と長期 使い分けのポイント
- 第24回:低リスクで利益率10%戦略 概要と失敗時の対処法
- 第25回:FXオプションを使い始めてFXの成績も良くなったのはなぜ?
- 第26回:超高ボラティリティ相場で有効 ストラングル売り戦略
- 第27回:読者の声:スプレッド拡大期の対処について
- 第28回:FXオプションをFX投資家の「もう一つの収入源」にする
- 第29回:FXオプション失敗からの教訓【2020年3月】
- 第30回:玉帳記入徹底のすすめ FXオプション失敗からの教訓その1
- 第31回:FXオプションの玉帳記入方法
- 第32回:失敗しないためにログイン前に決めるべき3つの事:FXオプション失敗からの教訓 その2
- 第33回:特殊ルール追加と基本ルールの位置づけ:FXオプション失敗からの教訓 その3
- 最終回:スワップ派 もう一つの砦 ここまでの実績と今後の展開
- 参考資料:移動平均線とRSIを使用 MT4に設定する方法
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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