乗換技その2:下げ相場で有利なポジションを作る方法
今回は、乗換技その2「下げ相場で有利なポジションを作る方法」です。
乗換技その2:下げ相場で有利なポジションを作る方法
前回乗換技その1では、「FX⇒FXオプションへの乗換」で含み損を減らす方法をご紹介しました。
今回ご紹介するのは、「下げ相場で有利なポジションを作る方法」です。
前回とは逆に「FXオプション⇒FXへの乗換」という手順でやります。
- 長期的には上げそうだ。
- でも、ガンガン上げていく局面では無さそうだ。
- 短期的に下げそうな局面もありそうだ。
こんな時に有効です。
うまくいくと、FXで単純に買いポジションを作るよりも、数円有利な買いポジションを作れます。
調度、現在の米ドル円を私は「この方法が有効そうな局面」とみています。
では、手順から始めましょう。
下げ相場で有利なポジションを作る方法 手順
以下の流れでやります。
- プット売りポジションを作る
- ある程度下げてくるまで待つ。
- プットオプション損きり
- FX買いポジションを作る
プット売りは、「上げ相場で利益・下げ相場で損失」で「利益限定・損失限定なし」という性質を持ちます。
ポジションを作った際にプレミアム受取が発生するため、利益の出しやすいポジションでもあります。
この手順で、「すぐにFX買いポジションを作る」よりも有利にしていける可能性があります。
うまくいかないパターンもありますので、後ほどご説明します。
手順1;プット売りポジションを作る
私が、このパターンでポジションを作る時は、プレミアムが最低でも1以上のものを狙います。
権利行使価格と権利行使日を意識しながら、探していきます。
それぞれ以下の傾向があります。
- 権利行使価格:現在値に近いほどプレミアムは高くなる。
- 権利行使日:期日まで長期であればあるほどプレミアムは高くなる。
どれくらいのプレミアムが受取れるかは、相場環境によって大きく違ってきます。米ドル円だと平常時で最大2〜3くらいが目安です。
仕掛けた時のプレミアム額が、このやり方で有利になる最大値となります。
つまり、プレミアム3で仕掛けられれば最大3有利になり、プレミアム1で仕掛けると最大1有利になるということです。
こう書くと、大きいほど良い気がするものですが、実はそうでもないのです。
その辺のポイントは、後ほど書かせていただきます。
説明の都合上、ここでは以下のような仕掛けをしたとします。
- 米ドル円 現在値135円
- 権利行使価格135円
- 権利行使日 3カ月後
- プレミアム 2
- 数量10万通貨の受取額:2×10万通貨=20万円
仕掛けた段階では、20万円のプレミアムを受取ったという段階です。
そして、仕掛け時点ではそのプット売りポジションにはスプレッド0.1程度が上乗せさえれて2.1程度のプレミアム価値がある状況です。
つまり、そのまま決済すれば21万円支払わないといけないということです。受取った金額は20万円なので1万円の含み損ということです。
でも、米ドル円が135円以上で推移するとプレミアムは3カ月後にはゼロ円となる仕組みとなっています。
この時点で、FXで買いポジションを作った場合とプット売りで仕掛けた場合では、以下のようになります。
- 米ドル円135円
- FX含み損益 0円
- 米ドル円 135円
- プレミアム受取金額 20万円
- プット売り含み損 ー21万円
- 差引損益 ー1万円
出発点段階では、プット売りの方が1万円くらい不利な状況ですね。
この状況を理解したら、手順2へと進みます。
手順2:ある程度下げてくるまで待つ。
プット売りを作った後は、米ドル円相場が下げてくるのを待ちます。
下げ相場となった場合、FXの買いポジションも含み損となるのですが、プット売りポジションも含み損が増えていきます。
でも、増え方はFXよりも緩やかなになっています。
例えば、参考例として書かせていただくと・・・・・
- 米ドル円が135円⇒134円と1円下げた。
- 10万通貨の買いポジションで10万円の含み損
この場合、プットオプションのプレミアムは・・・
- 2.1⇒2.8に上昇⇒10万通貨で7万円含み損増加
・・・という感じになります。
下げ相場で含み損増加とくのは同じなのですが、FXよりもFXオプションの方が含み損増加ペースがゆっくりなのです。
プットオプションのプレミアムの値動きは、相場環境で大分違ってくるため、正確な予測は出来ません。
でも、相場が落ち着いている時はこの参考例のように、為替値1円下落で、プットオプション・プレミアム0.7上昇くらいの割合になります。
こうなった場合の収支は・・・
- 最初のプレミアム受取額20万円
- 2.1⇒2.8に上昇
- プット売り10万通貨の含み損 28万円
- 差引含み損 8万円
つまり、1円くらい下げてくると、FXの含み損増加よりもFXオプションの含み損増加の方が少ないという現象が起きます。
この下げが5円くらいに大きくなってくると、オプションを使うメリットが見えてきます。
- 米ドル円が135円⇒130円と5円下げた。
- 10万通貨の買いポジションで50万円の含み損
- 最初のプレミアム受取額20万円
- プレミアム 5×0.7+2=5.5
- プット売り10万通貨の含み損 ー55万円
- 差引損益 ー35万円
FXで保有していれば50万円の含み損のはずが、プット売りにしておいたことで35万円くらいの含み損ですむという状況になりました。
最初にプレミアムで受取った金額が20万円あるのですが、その内15万円くらいがプット売りの含み損軽減に貢献した感じになっています。
この部分を「プレミアム貢献度」とでも、呼ばせて頂きます。
プット売りの仕組み上、このプレミアム貢献度は相場が下げれば下げるほど最初に受け取ったプレミアムに近づいていきます。
この場合、20万円に近づいていくということです。
20万円になることはほとんどないので、私はその7〜8割くらい貢献したところで「OK」としています。
これくらい下げたら、FXへの乗換を検討します。
ただし・・・
権利行使日が2週間後以内くらいに近づいていれば、このまま権利行使日まで待つこともあります。
権利行使日まで待てば、プレミアム貢献度は10割になるからです。
権利行使日まで1カ月以上あるような時は、そこまで待つと相場がどう動くかわかりませんので、そのまま手順3を実行することが多いです。
手順3:プットオプション損きり
まず、プットオプショを損きりします。
先程の参考例の状況だとすると・・・
- 最初のプレミアム受取額20万円
- プレミアム 5×0.7+2=5.5
- プット売り10万通貨の含み損 ー55万円
- 差引損益 ー35万円
単純な損きり額は55万円ですが、既に20万円受取っているので差引の損失が35万円となります。
FXでポジションを作っていればー50万円というところだったので、15万円有利になっています。
この有利さを、自分のポジションに反映するために、手順4を実行します。
手順4:FX買いポジションを作る
プット売りを損きりした後に、FX口座で米ドル円買いポジションを作ります。
135円から5円下げているので、買値130円のポジションとなります。
・・・ この流れでいくと
FXでポジションを保有していれば50万円の損失となるところなので、15万円ほど有利に出来たということになります。

なんか、損きりでポジション作るってのが嫌だなぁ。下げるまで待って作ればいいんだよな。
ああ、その気持ちわかるね。
多分、多くの人がそう思うだろうね。でも、メリットを考えると乗り換えた方が得だと思うよ。
この方法、私は結構使っています。
長期的に上げていくという自信が、かなりのものであれば「下げるまで待つ」というのが一番良いです。
でも、「円安傾向続きそうで、いつ上がりだすかわからない」という感じで、下げにそれほど自信が持てないときも多いですよね。
そういう時は、今回の方法が有効です。
こうして、FXへ乗換後は上がりだすまで放っておくだけです。
長期的に上がるという見通しがズレなければ、上がったときには損きり分を回収して利益を増やしてくれることになります。
5円くらいガクンと下げたパターンで説明しましたが、現実にはいろんなパターンがあります。
それでも、下げれば下げるほどFXオプションの有利度が上がっていくという仕組みは変わりません。
以下に特徴をまとめておきます。
特徴その1:値動きが鈍いときは利益を何度も取れる。
この「下げ相場で有利なポジションを作る方法」は、値動きが鈍い時期は同じ条件で利益を何度も取れます。
今回の事例では、米ドル円135円近辺で仕掛けてプレミアム2で仕掛けています。
プレミアム2は、スプレッドで2円に相当します。
なので、3カ月後に米ドル円が134円くらいだった場合、FXで135円の買いポジションであれば1円の含み損・10万通貨で10万円の含み損です。
でも、この仕掛けであれば、プレミアム2円ー1円為替損失=1円最終利益・10万通貨で10万円となり、利益の出る範囲です。
136円に上昇したような時でも利益になります。
FXで135円の買いポジションであれば、1円分・10万通貨で10万円の利益となるところです。
一方、プット売りではプレミアム2円=2円最終利益・10万通貨で20万円ということになるので、FXよりも1円多く利益を取れます。

おおっ、上げても下げてもいいってことか!いいんじゃない!
いやいや、そんなに都合よくはいかない。
特徴その2:プレミアム以上の上げ相場となるパターン
この仕掛けで悔しい想いをするのが、米ドル円が大きく上昇した時です。
プット売りは、「利益限定・損失限定なし」という性質を持ちます。具体的には仕掛けたときに受取ったプレミアム代金が最大利益になります。
今回のケースでは、プレミアム2・10万通貨で20万円です。
米ドル円が135円⇒140円と上昇すれば、FXであれば50万円の含み益となります。
でも、プット売りの利益は、20万円以上にはなりません。
この部分、絶対忘れないでくださいね。
ここ、しっかり把握しておかないと「こんなはずではなかった」という気落ちになりますので、ご注意ください。
特徴その3:「短期の急落パターン」は成功パターンなのですが
この方法での成功パターンの一つは、短期の急落です。
米ドル円が短期で5円・10円と下げるような時は、FXポジションの含み損増加に比べてプット売りポジションの含み損増加が少なくすむので、最大20万円のメリットを短期で実感できる状況となります。
でも、投資家心理としては微妙なところですよね。
仮に、米ドル円が135⇒125円と10円下落したとしましょう。
FXの買いポジションであれば100万円の含み損です。
プット売りでプレミアム2受取であれば、10円下げたとしても、含み損は80万円ちょっとくらいで済みます。
確かに、20万円くらいのメリットはでています。
でも、「やった80万円の損失で済んだ!」・・・と素直に喜べるかどうかはわかりません。
その時点では、辛い気持ちになってしまうことも多いだろうと思います。
私も、過去何度もそういうパターンを経験しました。
それでも、こういう「含み損を減らす地道な努力」を続けてくことで、長期的な利益増として貢献してくれるようになります。
特徴その4:権利行使日は長期になるほど反応が鈍い
この方法を使う際に、留意しておいて頂きたいのが「オプションと為替相場との反応度」です。
為替相場が1円動いたときに、オプション相場がどれくらい反応するかということです。
具体的には、以下のような傾向があります。
- 権利行使日が長期になるほど反応が鈍目
- 現在値から離れた権利行使価格ほど反応度は鈍目
- ボラティリティが高くなるとプレミアムが上昇する
- ボラティリティが低くなるとプレミアムが下落する
ボラティリティの変動は、投資家としては調整できないのですが、権利行使価格と権利行使日は選べます。
単純にプレミアムの高さだけで選ばずに、ご自身の基準を決めていくようにすると良いと思います。
私は、「下げ相場で有利なポジションを作る方法」として仕掛ける時は、プレミアム2くらいを目安にしています。
メリット:下げ相場で有利なポジションを作る方法
- 下げ相場ではプレミアム分買値を下げる効果がある。
- 相場が動かない時でもプレミアム利益を受け取れる。
- 単純に上げただけの場合でも、プレミアムは受取れる。
無理はしたくなし、でも安く買いポジションを作りたい、という時に有効な方法です。
我慢強く続けていけば、結構有利な運用ができるようになります。
「下げる」と思っていたのに、上げてしまうということもあります。そういう時でも、プレミアム受取が出来るので、全く無駄だったとなることは少ないです。
デメリット:下げ相場で有利なポジションを作る方法
- 想定通りの下げ局面なく上げてしまうと利益が少なくなる。
- 期日まで数ヶ月あることが多いので日数がかかる。
権利行使期日までの日数が長いことが多いので、それを待つのが辛いと感じるかもしれません。
あんまり辛い時は、この方法は止めた方が良いです。
ポジションを忘れるくらいで調度良いです。
ご自身に合う方法をお選びくださいませ。
FXオプション講座2022 目次
- 第1回:コール買い プット買い 小資金で大儲けの理屈と落とし穴
- 第2回:コール売り・プット売りが勝ち易いのはなぜか?
- 第3回:「売り」で負けることもある 現実の事例
- 第4回:オプションの権利行使価格の見方使い方
- 第5回:最大損失を減らす方法 リスク調整その1
- 第6回:損しにくくする方法 リスク調整その2
- 第7回:インフレ対策にコール売りを使う
- 第8回:荒れ相場でFXオプションで起こる3つの現象
- 第9回:FXとFXオプション比較 6つの売買の復習
- 第10回:まちぶせ戦略・・利益を取りながら目標値まで待つ
- 第11回:一攫千金戦略・・大変動期で大きく狙う
- 第12回:ビッグヘッド戦略・・・長期目線での上げ相場狙い
- 第13回:ツインドラゴン戦略・・・攻撃力2倍で攻める
- 第14回:キングギドラ戦略・・・3倍の凄さとデメリット
- 第15回:ストラングルの売り・・高ボラティリティに仕掛けるメリット
- 第16回:損きりすべきときにしなかった実例
- 第17回:カバードコール戦略の特徴と仕掛け方
- 第18回:リアル運用:カバードコール戦略体験談
- 第19回:乗換技その1:買いポジションの含み損を減らす方法
- 第20回:乗換技その2:下げ相場で有利なポジションを作る方法
- 第21回:現実のポジション解説:下げ相場で有利なポジションを作る方法
- 第22回:乗換の技 その3 売りポジションの含み損を減らす方法
- 第23回:乗換の技 その4 コール売り⇒コール売り
- 第24回:乗換の技 その5 プット売り⇒プット売り
- 第25回:コール売り⇒プット売り 方向転換したいときの乗換
- 第26回:利益出しやすいFXオプション 成績公開しない理由
ここで使っているFXオプション口座はサクソバンク証券です。