FXオプションで損しにくくする方法・・・リスク調整その2
FXオプションによる2つのリスク調整の2つ目「損しにくいポジションの作り方」をご紹介します。
前回、FXオプションで最大損失を減らす方法について書かせて頂きました。
参考記事: 「コール買い」「プット買い」で最大損失を減らす
今回は、FXオプションでの損失リスク調整の2つ目「損しにくくする方法」です。
損しにくくする方法 コール売り・プット売り
FXであれば、ポジションを作ったあと勝つか負けるかは確率約50%です。
でも、FXではその確率を大きく動かせます。
- 確率80%くらいで勝てそうなポジション
- 確率60%くらいで勝てそうなポジション
「確率90%」と表示される訳ではないのですが、「ほぼ勝てる」と思えるポジションを作ることができます。
使うポジションは、上げ相場・下げ相場狙いでわかれます。
プット売りは、「上げ相場で利益・下げ相場で損失」で「利益限定・損失限定なし」という性質を持ちます。
コール売りは、「上げ相場で損失・下げ相場で利益」で「利益限定・損失限定なし」という性質を持ちます。
前回「最大損失を減らす方法」で使ったのはコール買い・プット買いでしたが、今回は「コール売り・プット売り」を使います。
作り方も簡単です。
仮定なので、「特に損しにくいポジション」を作ってみましょう。
「特に損しにくいポジション」の作り方
- 日時:2022年2月21日
- この時点の米ドル円値 115.04円
- 権利行使日 2022年6月22日
権利行使日が6月と約4カ月先とかなり先です。
ここで「売り」ポジションを作る時は、「ビッド」のところでポジションを作ります。
画像上、「一番損しにくいポジション」は、「右上」と「左下」です。これでポジションを作ると以下のようになります。
上げ相場狙い プット売り
上げ相場を狙う時は、プット売りポジションを作ります。
画像右上でポジションを作ると、こういう感じになります。
- 権利行使価格 109.50円
- プレミアム受取額 0.477
- 1万通貨での受取額
- 0.477×1万通貨=4,770円
- 損益分岐点:109.50−0.477=109.023円
ポジションを作ったときに4,770円のプレミアム受取が発生します。
あとは、権利行使日の6月22日に米ドル円が109.50円以上であれば、プレミアムは0円となるので、4,770円の受取額は最終利益として確定します。
米ドル円現在値は115円ですので、見通し通りにいかずに5円くらい円高になったとしても最終利益は確保できます。
プット売りは、「利益限定・損失限定なし」という性質ですので、最大利益は4,770円で増えることはありません。
その一方で、米ドル円が6円・7円と下げれば、損失はどこまでも大きくなります。
でも、その損失はFXでポジションを持ったときほどではありません。
仮に権利行使日に10円下げて105円になったとすると・・・
- ポジション作成時受取金 4,770円
- 満期時損失:109.50−105=ー4.5円
- 1万通貨での損失:4.5×1万通貨=ー45,000円
- 最終損失:4,770−45,000=ー40,230円
想定される最終損失は、40,230円です。
とはいえ、FXで115円で買いポジションを作った場合であれば、105円だとー10万円の損失です。
それよりは、相当軽いですね。
下げ相場狙いは コール売り
先程のと同様のポジションを下げ相場狙いで作る時は「コール売り」を使います。
同じ画像で作ってみましょう。
コール売りは、この画像左側の「ビッド」です。薄青色のところでポジションを作ったとしましょう。
- 権利行使価格 121.00円
- プレミアム受取額 0.107
- 1万通貨での受取額:0.107×1万通貨=1,070円
- 損益分岐点:121.00+0.107=121.107円
プット売り同様に、ポジションを作ったときに1,070円のプレミアム受取が発生します。
あとは、権利行使日の6月22日に米ドル円が121円以下であれば、プレミアムは0円となるので、1,070円の受取額は最終利益として確定します。
米ドル円現在値は115円ですので、見通し通りにいかずに6円くらい上昇したとしても最終利益は確保できます。
売り続けて年利15%?
確かに損しにくいというのはわかるが微妙だな。
まあ、そうですよね。
これは、画像上で一番損しにくいポジションを作ったとして説明しています。
でも、「スワップポイント中心の運用をしたい」というスタイルの方には合っているかもしれません。
証拠金を10万円くらい入れて、プット売りまたはコール売り1万通貨のポジションを作る。
4ヶ月で5000円くらい受取れるように作れば、満期が来るたびに同じようなポジションうを作って、プレミアムを受取続けられる。
その受取額も年間15000円くらいになります。
実際には、為替相場の動きによってプレミアムがかなり違ってくるのですが、こういうイメージでの利益獲得も出来るという意味でご理解ください。
「コール売り」「プット売り」は、手堅く利益を受け取っていくのに適したポジションです。
為替相場に大きな動きがないままに権利行使日が到来したら、次のポジションを作って更に利益を取っていくこともできます。
この仕組み、FXでスワップポイントを受取り続ける状況に似ていますよね。
これを続けると、結構な利益率になります。
しかも、リスクはFX以下です。
現在値からある程度離れたところで「コール売り・プット売り」を仕掛けておけば、数円程度の逆行でも利益を確保できてしまいます。
利益額は少ないものの、使い方次第で手堅い収益源にできるのが「コール売り。プット売り」の面白いところです。
この「損しにくくする」やり方の長所・短所もまとめておきましょう。
損しにくくする方法のメリット
- 現在値から離れているので損しにくい。
- 最終利益を確保しやすいので手堅く利益を取れる
今回のケースでは、5円以上逆に動かなければ最終利益となるので、かなりの確率で最終利益になるだろうと思われます。
そういう状況においても、続けて仕掛けていける環境であれば、そこそこの利益を積み上げていけます。
実際、私もこのパターンで仕掛けたポジションで最終損失になったことはありません。
まだ、数回しか仕掛けていませんけどね。
損しにくくする方法のデメリット
- 利益限定のため大きく動いても利益は少ない。
- 満期までの期間が長い。
- FXと同様の証拠金が必要となる。
- ボラティリティが急上昇すると、プレミアムも急上昇する。
- 絶対に損しない訳ではない。
でも、利益は少ないと感じますよね。権利行使日までの期間も長いので、これを待つのは辛いという方もいるはずです。
そして拘束される証拠金も「売り」は「買い」に比べると多めになります。
FXオプションの「買い」は、プレミアム代金のみで良かったのですが、「売り」はFXで1万通貨のポジションを保有するのと同じ金額の証拠金が必要になります。
つまり、2022年2月22日現在の米ドル円であれば必要証拠金約4.6万円です。
権利行使日までにボラティリティが急上昇する可能性も考慮しておく必要があります。今回のウクライナ情勢でも、ボラティリティ上昇によりプレミアムが0.2くらい上昇したりします。
「損しにくいポジション」ですが「絶対に損をしないポジション」ではありません。
上げ相場を狙ってプット売りを仕掛けたけれども、現実には10円くらい下げたような時は、最終損失となります。
なんとなくデメリットばかり多いような気もするかもしれませんね。
でも、この「売り」をうまく使うことで手堅い利益を確保できるというのは大きな魅力です。
でも、利益は少ない。
・・・・ですよねぇ。
リスクをもう少し取って、もう少し利益を増やす方法があります。
損しにくさの調整その1:権利行使価格を動かす
先程説明した「最大損失を減らす」方法は、権利行使価格と権利行使期日をいじるることで、リスクと利益の出しやすさを調整できました。
この「特に損しにくいポジション」も、権利行使価格と権利行使期日で、リスクと利益を調整できます。
では、「権利行使価格」を動かしたらどうなるかをご説明します。
先程のの画像を使います。
この画像で、現在値近辺の115円でプット売りを作ったとしましょう。
受取れるプレミアムは、1,935です。1万通貨のプット売りポジションを作るとこうなります。
「米ドル円現在値は115円」
- 権利行使価格 115.00円
- プレミアム受取額 1.935
- 1万通貨での受取額:1.935×1万通貨=19,350円
- 損益分岐点:115.00−1.935=113.065円
1万通貨で19,350円の利益は、利益額としてまあまあですよね。
しかも、最終的に損失になってしまう損益分岐点が113.065円ですので2円下落しなければ利益を確保できるという損しにくさも確保しています。
これと、先日の「特に損しにくいポジション」と比較してみましょう。
- 権利行使価格 109.50円
- プレミアム受取額 0.477
- 1万通貨での受取額:0.477×1万通貨=4,770円
- 損益分岐点:109.50−0.477=109.023円
両方とも、「上げ相場で利益・下げ相場で損失」で「利益限定・損失限定なし」という性質を持ちます。
同じ性質ではあるものの、受取れる利益額などが違ってきます。
受取れる利益額
- 権利行使価格115.00円:19,350円
- 権利行使価格109.50円:4,770円
どちらも、この利益がこのポジションの利益上限になります。約4倍の差がでています。
損益分岐点
- 権利行使価格115.00円:113.065円
- 権利行使価格109.50円:109.023円
今回のポジションは、米ドル円が113円割れすれば最終損失になります。これに対して、「特に損しにくいポジション」は、109円割れくらいまでさがらなければ最終損失にはなりません。
利益を取るか・・・・損のしにくさを取るか・・・実際の運用では、その度合いを調整して、どこでポジションを作るか決めていきます。
権利行使価格を調整することによるメリットを最後にまとめておきます。
権利行使価格調整のメリット
- 特に損しにくいポジションよりは利益が増える。
- FXでポジションを持つよりは損しにくい。
FXでポジションを持てば115円の買いポジションとなる状況なので、損益分岐点113円のこのポジションは、それよりは損しにくいです。
権利行使価格調整のデメリット
- 利益を出そうとすると損益分岐点が現在値に近くなる。
- 期日までかなりの日数がある。
「売り」でプレミアム受取額を増やそうとすれば権利行使価格を現在値に近づけていくことになります。
それによって、損益分岐点も現在値に近くなっていきます。
それと、満期である権利行使日まで相当の日数があるので、待ちきれないと感じる方も多いだろうと思います。
次は、権利行使日を調整するパターンです。
損しにくさの調整その2:権利行使日を短期にする
権利行使日を短期で設定するとどうなるのか、ご説明させていただきます。
この画像は、原稿を書いている2022年3月9日のものです。権利行使日は3月16日です。
- 画像日時:2022年3月9日
- 権利行使日:2022年3月16日
- 米ドル円値:115.78円
この時点で仕掛けたとすると、3月16日の権利行使日までは7日間です。
為替売買の出来る日数では5営業日という短期のポジションになります。
これで、上げ相場で利益を出すのであればプット売り、下げ相場で利益を出すのであればコール売りを仕掛けます。
それぞれ薄青色・薄赤色でポジションを作ると以下のようになります。
- 権利行使価格 115.75円
- プレミアム 0.398
- 1万通貨での受取金額:0.398×1万通貨=3,980円
- 損益分岐点:115.75ー0.398=115.102円
- 権利行使価格 116.00円
- プレミアム 0.302
- 1万通貨での受取金額:0.302×1万通貨=3.020円
- 損益分岐点:116.00+0.302=116.302円
米ドル円値が115.78円の時に1週間勝負で仕掛けるポジションです。権利行使日には、ポジションが清算されることになります。
清算したときに、最終利益を確保できる為替値が損益分岐点ということになります。
- 最終損益=仕掛け時の受取金額ー清算時の支払金額
プット売りであれば、権利行使日に115.75円を割ったときには清算時に支払となります。
ポジションを作った際にプレミアム代金を受け取っていますので、最終損益は、受取と支払の両方を合計することになります。
大分、前の2つと比べると、際どい勝負になった感じがするな。
そうですよね。
でも、このパターンは結構使うんです。
例えば、長期保有前提の買いポジションに利益が乗ってきて、決済しても良い感じになってきたときです。
こういう時に、決済せずに「コール売り」を作るんです。
為替相場がそれほど動かなければ、1週間くらいで利益を上乗せできます。
これを何度も繰り返せるときもあります。
何度か繰り返せれば、それだけ当初の利益を増やすことができる訳です。
これは一例ですが、FXで長期保有が多い方などは、「コール売り」「プット売り」は効果的な使い方が出来ます。
では、メリット・デメリットをまとめておきます。
権利行使日を短くするメリット
- 短期で勝負が決定する。
- FXで単純に勝負するよりは損しにくい。
- 何度も繰り返せるようならば利益は大きくなる。
- FXポジションと組み合わせると効果的
数日〜1週間くらいの短期でも、ちょこちょこと利益が取れます。
FXポジションよりは損しにくく、動きの少ない往来相場では特に有効です。
また、「FX買いポジション+コール売り」や「FX売りポジション+プット売り」と組み合わせることで、更に損しにくいポジションとなります。
権利行使日を短くするデメリット
- 仕掛け方にもよるが、損しにくいという特徴は、かなり薄れる。
- 相場が大きく動くときなどは利益を減らしてしまう。
デメリットとしては、やはり「損しにくい」という部分がかなり弱くなることです。
ここを重視する方は、このパターンは使わない方が良いです。
あと、上げ相場で大きく動くときも注意が必要です。
プット売り・コール売りともに、「利益限定」ですので、どれだけ読む通りに相場が動いても、最大利益額は最初に受け取ったプレミアム代金が上限です。
先程の例で行くと、「上げ」と思ってプット売りを仕掛けた後、米ドル円が5円くらい上昇したとしましょう。
FXで1万通貨なら5万円の利益が取れる局面です。
でも、プット売りで勝負した場合は、利益は3.980円のみです。
1円も増えませんので、ご注意ください。
FXオプション講座2022 目次
- 第1回:コール買い プット買い 小資金で大儲けの理屈と落とし穴
- 第2回:コール売り・プット売りが勝ち易いのはなぜか?
- 第3回:「売り」で負けることもある 現実の事例
- 第4回:オプションの権利行使価格の見方使い方
- 第5回:最大損失を減らす方法 リスク調整その1
- 第6回:損しにくくする方法 リスク調整その2
- 第7回:インフレ対策にコール売りを使う
- 第8回:荒れ相場でFXオプションで起こる3つの現象
- 第9回:FXとFXオプション比較 6つの売買の復習
- 第10回:まちぶせ戦略・・利益を取りながら目標値まで待つ
- 第11回:一攫千金戦略・・大変動期で大きく狙う
- 第12回:ビッグヘッド戦略・・・長期目線での上げ相場狙い
- 第13回:ツインドラゴン戦略・・・攻撃力2倍で攻める
- 第14回:キングギドラ戦略・・・3倍の凄さとデメリット
- 第15回:ストラングルの売り・・高ボラティリティに仕掛けるメリット
- 第16回:損きりすべきときにしなかった実例
- 第17回:カバードコール戦略の特徴と仕掛け方
- 第18回:リアル運用:カバードコール戦略体験談
- 第19回:乗換技その1:買いポジションの含み損を減らす方法
- 第20回:乗換技その2:下げ相場で有利なポジションを作る方法
- 第21回:現実のポジション解説:下げ相場で有利なポジションを作る方法
- 第22回:乗換の技 その3 売りポジションの含み損を減らす方法
- 第23回:乗換の技 その4 コール売り⇒コール売り
- 第24回:乗換の技 その5 プット売り⇒プット売り
- 第25回:コール売り⇒プット売り 方向転換したいときの乗換
- 第26回:利益出しやすいFXオプション 成績公開しない理由
ここで使っているFXオプション口座はサクソバンク証券です。