ビッグヘッド戦略・・・長期目線での上げ相場狙い
私が、実際に使っている戦略の3つ目は、「ビッグヘツド戦略」です。
このネーミングは・・・・「買い数量は大きく・売り数量は小さい頭でっかちポジション」・・・そんなポジションバランスからつけました。
今回の戦略は、「比較的長目の上昇トレンドを大きく取りたい」ときに有効です。
前回紹介した一攫千金戦略は、比較的短期の暴落・暴騰を狙って大きく稼ぐタイプでした。
一攫千金戦略を長期にすることも出来るのですが、そうするとプット買い・コール買いを大量に仕掛る仕組み上、どうしても最初の投下資金が大きくなります。
そして、見込みが外れれば全損のリスクもあります。
ビッグヘッド戦略では、その辺の短所が改善されています。
実際に現在保有中のポジションがあるので、その内容をもとに説明させていただきます。
ビッグヘツド戦略 保有中のポジション
ビッグヘッド戦略は、「コール買い+プット売り」の組み合わせで行います。
コール買いは、「上げ相場で利益・下げ相場で損失」で「損失限定・利益限定なし」という性質を持ちます。
プット売りは、「上げ相場で利益・下げ相場で損失」で「損失限定なし・利益限定」という性質を持ちます。
どちらも「上げ相場で利益・下げ相場で損失」という上げ相場向きのポジションです。
そして、2つ合わせると・・・・
- 上げ相場で利益・下げ相場で損失
- 損失限定なし・利益限定なし
・・・・ となります。
おい、ちょっと待て!それって、FXの買いポジションと同じじゃないのか?
そう、とっても似た感じになるんです。
でも、ちょっと違うのです。
FXオプションならではのフレーバーが入ったものになっているのが、この合成ポジションなのです。
どう違うのかを、これから説明させて頂きます。
まず、2つのポジションがどのようなもので、合成するとどうなるかみてみましょう。
ビッグヘッド戦略:コール買い+プット売りの合成ポジション内容説明
2つのポジションは、以下の内容になっています。
- 権利行使価格 124.50円
- 権利行使日 2022年9月21日
- 仕掛け数量 14万通貨
- プレミアム 2.217
- プレミアム支払代金:2.217×14万通貨=310,380円
- 権利行使価格 123.50円
- 権利行使日 2022年9月21日
- 仕掛け数量 10万通貨
- プレミアム 3.104
- プレミアム受取代金:3.104×10万通貨=310,400円
合成ポジションを作った時点の収支はこうなります。
- 310,400円受取ー310,380円支払=20円受取
前回の一攫千金戦略では、最初にそれ相応の資金が必要でしたが、今回の仕掛けは手出しでゼロ円です。
ビッグヘツド戦略では、ポジション作成時の手出しはありません。
FXで米ドル円10万通貨の買いポジションを作ったのと似たような状況を想定しています。
似たような状況でも、FXとFXオプションでの合成ポジションでは内容が違ってきます。
このポジションのリスクとリターンは、こうなります。
- 上げのリターン 14万通貨
- 下げのリスク 10万通貨
下げのリスクは10万通貨なのですが、上げ相場は14万通貨で追いかけていくという形になっています。
これだけでも、「ああ、そういうことか」と思った方もいるかもしれません。
FXポジションと比較すると、このビッグヘッド戦略ポジションの面白さが、分かりすくなります。
FXとビッグヘッド戦略 比較
ポジションを作った当時の米ドル円相場が124円前後でしたので、そのレートで10万通貨の買いポジションを作った場合との比較です。
FXポジション内容
- 米ドル円124.00円 10万通貨買いポジション
- ポジション作成時損益 0円
FXオプション内容
- コール買い 権利行使価格124.50円 14万通貨
- プット売り 権利行使価格123.50円 10万通貨
- ポジション作成時損益 20円
権利行使日の9月22日時点として、単純に考えると・・・
上げ相場の時は、FXは10万通貨・FXオプションは14万通貨で利益を伸ばしていく。
下げ相場の時は、FXもFXオプションも10万通貨、ただしFXは124.00円を割った時から収支が含み損となっていく。
これに対して、含み損増加開始ラインががFXオプションは権利行使価格123.50円と少し有利になっている。
つまり、FXオプションの「ビッグヘッド戦略」の方が下げ相場での含み損が少な目になるということです。
下げ相場については、これ以上の説明は不要でしょう。
「途中決済」などもケースもあるのですが、基本的に下げ相場はFXオプションの方が含み損少な目になります。
では、上げ相場はどうなるでしょう。
コール買いポジション数量が14万通貨とFX買いポジよりも多いので、上げ相場が大きなものになればなるほどFXオプションの方が利益額が大きくなっていきそうだというイメージは持てます。
でも、FXの買い値は124.00円でFXオプションの権利行使価格は124.50円ですよね。
そこが引っかかる方もいるかもしれませんので、上げ相場についてもう少し掘り下げてみましょう。
上げ相場でのFXとビッグヘッド戦略比較
上げ相場でも「ちょっと上げ」と「大きく上げ」の2つの局面で、見方が変わってきます。
124円から数十銭くらい上げたくらいであれば、FXポジションの方が利益が大きくなり易いです。
FXオプションは、売買スプレッドも10銭相当くらいあるので、狭目の値動きでは不利になります。
ビッグヘッド戦略の損益が有利になるのは、124円より3円くらい上昇した127円辺りからです。
「3円上昇した地点の損益比較」
FXポジション
- 124円買いポジション
- 3×10万通貨=30万円利益
ビッグヘッド戦略
- 権利行使価格124.50円で計算して、2.5円の利益幅
- 2.5円×14万通貨=35万円利益
説明を分かりやすくするため、権利行使日に127円だったと想定して計算しています。
権利行使日前に途中決済をすることもできます。
ただ、FXオプション売買値のプレミアムには時間的価値やボラティリティや金利がが入っているので、為替相場の値動きがそのまま反映するようにはなっていません。
為替で1円動いてもFXオプションでは0.7円程度の反応ということもあるため、それらを考慮した正確な比較は難しいものがあります。
大雑把な比較ではありますが、「どうなればこの戦略が有効になるか」という部分を掴んでいただければ良いかなと思っています。
片方だけ決済ということも可能
ビッグヘッド戦略で合成した2つのオプショポジションは、片方だけ決済することもできます。
例えば、こんな売買です。
大きく上げたときに利益が大きく乗っている「コール買い」のみを利益確定して、あとは期日まで「プット売り」を保有してプレミアムがゼロになるのを待つ。
これで、何かいいことあるの?
そう思う方もいるかもしれません。
実は、こういう売買、オプションでは結構有効なのです。
先程のポジション画像をもう一度ご覧ください。
上段が「プット売り」で、下段が「コール買い」です。
この時点の米ドル円は126.44円です。
つまり、仕掛けた時点の124円から2.44円上昇していて「コール買い」が2.217⇒3.447に上昇しています。
ここでコール買いを決済して受取れる代金を計算するとこうなります。
- 3.447×14万通貨=482,580円
ちょっと、利益多いような気がしませんか?
実は、多いんです。
いつもやっている、権利行使価格からの上昇値での計算でいくと、権利行使価格の124.50円から1.94円上昇になります。
その分だけであれば利益額は1.94×14万通貨=で271,600円くらいのはずなのです。
それが、482.580円です。
20万円以上多いですよね。
これが、コール買いのみを決済する理由でもあります。
そして、ここからが肝です。
残ったプット売りポジションも同時に決済した場合はこうなります。
- 2.165×10万通貨=216,500円支払
コール買い決済で482.580円受取ですが、プット売り決済では216,500円支払です。合計すると残る利益額は大きく減ります。
でも、このプット売りポジションの216,500円支払は、権利行使日に権利行使価格まで米ドル円が下がらなければ、プレミアムはゼロになる運命です。
今後も円安傾向が想定される状況であれば、そのままにしておけばゼロ円になるのです。
決済しないで放っておいてもいいってことか?
その通りです。
あるいは、「米ドル円が123.50円まで下がれば買っても良い」という方針であれば、将来の布石ポジションとしてそのまま持っておいて問題ありません。
理由はいろいろありますが、こういう時はコール買いのみを決済しておいて、プット売りは残しておくというのも有効な選択肢の一つになります。
下げ相場では使いにくい
同じ仕組みで、下げ相場を攻めようと考えた方もいるかもしれません。
コール売り+プット買いとすれば、理屈上はさきほどとは逆に同様に下げ相場を攻めることができます。
でも、それはちょっと難しいのです。
それは、米ドル円のコールとプットのプレミアムが違うためです。現在、米ドル円のプレミアム値は以下のバランスになっています。
- プット値>コール値
こうなってしまうのは、米国金利などがオプションのプレミアム値に含まれているためです。
いずれにしても、この仕組みなので、同じくらいの権利行使価格でプット売りで受取った値の範囲内で、数量を増やしてコール買いを仕掛けることができます。
コール売り+プット買いは、権利行使価格を離したり、権利行使日をうずらしたりしないとプット買いの数量を増やすことは難しいのです。
ビッグヘッド戦略のメリット
- 買いスワッププラス通貨ペアの上げ相場狙いに使える。
- 上げ相場は利益増を狙える。
- 下げ相場はリスクを抑えられる。
- 片方だけ決済することもできる。
- ポジション作成時の手出しゼロ円で設定できる。
米ドル円などの買いスワッププラス通貨ペアで、FXで上げ相場を攻める時に使える戦略です。
FXよりも損失少な目で利益を大きく狙えます。
見込み通りに上昇したら、片方だけ切り離して利益確定するなど変形することで、更なる利益増も狙えます。
ビッグヘッド戦略のデメリット
- 値動き小さいときはスプレッドを抜くのに時間がかかる。
- 買いスワッププラス通貨ペアの下げ相場向けはバランス悪し。
- 指値注文できないのが地味に辛い。
この戦略、数日くらいの短期ではそれほど効果がでない事が多いです。
また、下げ相場もバランスが悪くなるので、おすすめできません。
あと、文章内では触れていませんが、「指値注文」が使えないのも辛いと感じる時があります。
FXオプション講座2022 目次
- 第1回:コール買い プット買い 小資金で大儲けの理屈と落とし穴
- 第2回:コール売り・プット売りが勝ち易いのはなぜか?
- 第3回:「売り」で負けることもある 現実の事例
- 第4回:オプションの権利行使価格の見方使い方
- 第5回:最大損失を減らす方法 リスク調整その1
- 第6回:損しにくくする方法 リスク調整その2
- 第7回:インフレ対策にコール売りを使う
- 第8回:荒れ相場でFXオプションで起こる3つの現象
- 第9回:FXとFXオプション比較 6つの売買の復習
- 第10回:まちぶせ戦略・・利益を取りながら目標値まで待つ
- 第11回:一攫千金戦略・・大変動期で大きく狙う
- 第12回:ビッグヘッド戦略・・・長期目線での上げ相場狙い
- 第13回:ツインドラゴン戦略・・・攻撃力2倍で攻める
- 第14回:キングギドラ戦略・・・3倍の凄さとデメリット
- 第15回:ストラングルの売り・・高ボラティリティに仕掛けるメリット
- 第16回:損きりすべきときにしなかった実例
- 第17回:カバードコール戦略の特徴と仕掛け方
- 第18回:リアル運用:カバードコール戦略体験談
- 第19回:乗換技その1:買いポジションの含み損を減らす方法
- 第20回:乗換技その2:下げ相場で有利なポジションを作る方法
- 第21回:現実のポジション解説:下げ相場で有利なポジションを作る方法
- 第22回:乗換の技 その3 売りポジションの含み損を減らす方法
- 第23回:乗換の技 その4 コール売り⇒コール売り
- 第24回:乗換の技 その5 プット売り⇒プット売り
- 第25回:コール売り⇒プット売り 方向転換したいときの乗換
- 第26回:利益出しやすいFXオプション 成績公開しない理由
ここで使っているFXオプション口座はサクソバンク証券です。