FXオプション乗換技 プット売り⇒プット売り編
乗換技、次は「プット売り⇒プット売りの乗換」です。
これも、私が普段よく使う売買の一つです。
プット売りの乗換
FXオプションからFXオプションへの乗換技、次は「プット売り⇒プット売り」です。
プット売りは、「上げ相場で利益・下げ相場で損失」で「損失限定なし・利益限定」という性質を持ちます。
「買いポジションを作りたいが、下げるかもしれない」
そんな時に「現在値よりも安値で買いポジションを作る手段」などでも使えます。
今回の連載でも、プット売りを使った戦略をいろいろと紹介させて頂きました。
- 参考記事:下げ相場で有利なポジションを作る方法
- 参考記事:ビッグヘッド戦略・・・長期目線での上げ相場狙い
戦略はいろいろあるのですが、実際にプット売りを仕掛けた後に相場が下げてくると相応の損失が発生することになります。
想定内の欠点ではあるのですが、「なんとかしたい」という気持ちが出ることだってあります。
そういう時に今回の乗換技は使えます。
欠点を補う乗換技
例えば、ビッグヘッド戦略であれば、以下のようなポジションを作ります。
- プット売り10万通貨 権利行使価格135円
- コール買い14万通貨 権利行使価格135円
どちらも「上げ相場で利益・下げ相場で損失」という性質を持つのですが、プット売りは「損失限定なし」であるのに対して、コール買いは「損失限定」という違いがあります。
その2つを組み合わせることで、FXでは出来ないポジションとなります。
- 上げ相場は14万通貨分の利益を追いかける
- 下げ相場は10万通貨分のリスクで済む
この仕掛けは上げ相場であればかなりの威力を発揮します。
当然ながら、下げ相場となれば10万通貨分とはいえ含み損が増えていく展開となります。
しょうがないとはいえ、含み損が増えるのは嫌ですよねぇ。
そういう時に、プット売りをもっと有利な状況に持っていく、そういうことも出来ます。
ビッグヘッド戦略などを、どの権利行使期間で仕掛けて、どれくらい経過しているかなど、条件はいろいろあるのですが、その辺も含めて理解しておく必要がります。
プット売りでよくある窮地
プット売りの乗換をしたくなる状況は、よくおきます。
まずはこちらの画像をご覧ください。
画像は2022年8月17日・米ドル円134.102円時点のものです。
ここでこのポジションを保有していたとしましょう。
- 米ドル円プット売り
- 権利行使価格134.25円
- 権利行使日8月24日
- 保有数量 10万通貨
- ここで決済した時の支払金額:0.946×10万通貨=94,600円
権利行使日まで1週間とはいえ、米ドル円が権利行使価格を割ってきています。
しかも、ここから更に下げるかもしれない。
もしも下げていけば、プット売りポジションの損失が大きくなってしまう。
そんな状況です。
ここで、目先の損失を防ぎたいという気持ちになったとしましょう。
持っている権利行使価格を下げられればいいのになぁ・・・なんて誰もが思います。
権利行使価格をもっと下げれば、プット売りポジションは損失を出しにくくなります。
FXで一度作ったポジションの売り値を変えることはできません。
でも、FXオプションはそれが出来てしまいます。
それが、ここで紹介している「乗換」です。
例えばこの画像をご覧ください。
画像1と同日の権利行使日2023年2月1日のプットのプレミアム表です。
薄赤色の権利行使価格128.50円でプット売りを仕掛けた場合、2.033のプレミアムを受取れます。
10万通貨であれば203,300円受取です。
これによって、権利行使価格は、134.25円から128.50円に下がりました。
なので、ドル円がここから2〜3円下げても、それほど心配する必要はなくなりました。
この乗換、やり方は簡単です。
プット売り⇒プット売りの手順
乗換手順は。以下の流れです。
これで完了です。
説明するまでもないかもしれませんが、損益収支も計算しておきましょう。
- 1の売買: ー94,600円
- 2の売買: 203,300円
- 合計損益:203,300円ー94,600円=108,700円
権利行使価格が5円以上下がって乗換による損益も10万円以上のプラスとなりました。
「権利行使価格が5円以上有利+10万円受取」
なんか、とってもお得な感じがするかもしれません。
おいおいおい、なんか凄いお得なんじゃないの?
ええ、一見そうですね。
でも、相当得な乗換事例ではあります。
特に今はボラテォイリティが高いままになっているので、プレミアムが高水準で推移しているから、こういう乗換は有利に出来る傾向があるね。
でも、それなりにメリットデメリットがあるから、しっかり把握しておく必要がある。
乗換前と乗換後の比較
では、この乗換について、乗換前と乗換後で比較していきましょう。
- 乗換前:134.25
- 乗換後:128.50
権利行使日まで保有することが基本方針であれば、米ドル円が権利行使価格まで下がらなければプット売りは損失を出さずに済みます。
このケースでは権利行使価格が134.25⇒128.50円となっていて、権利行使価格が5.75円も下がっています。
この乗換時点の米ドル円値が134円前半ですので、128.50円まではかなりの余裕があります。
これで着実に損失を出しにくいポジションとなっています。
- 乗換前:2022年8月24日
- 乗換後:2023年2月1日
権利行使日まで1週間ほどだったものが、今回の乗換により来年の2月1日と大幅に伸びています。
権利行使価格が有利になった引き換えに、権利行使日は長期となったということでもあります。
- 乗換前:0.946
- 乗換後:2.158
決済したときのプレミアム金額は、その時点で決済したときの支払金額です。
乗換後の2.158が乗換時の受取額2.033と違うのに気づかれた方もいるかもしれません。
乗換した時に受取れるプレミアム額は2.033です。それをそのまま決済した場合は2.158になります。
オプション・プレミアムのスプレッド部分です。
権利行使日の2月1日に米ドル円が権利行使価格128.50円以下であれば、この2.158はゼロとなります。
米ドル円が現在値近辺で推移するようであれば、日数経過と共に減っていく予定です。
とはいえ、0.946だったものが2.158に増加しているということは間違いありません。
おれ、なんか損してる?
気のせい、気のせいです。
ポジション作ったときに2.033受取っていますよね
そこを考慮すれば、スプレッド分の損失0.125分が増えただけです。
全体としてみれば、「権利行使価格」「権利行使日」「プレミアム」の仕組みの中で、納得のいく形になっています。
おかしなこともしていないし、特殊なテクニックというほどのことでもありません。
FXで同じことをやっても、売りポジションの損失が出るだけでメリットはありません。
でも、FXオプションでは、こういう乗換技を使うことで、「損を出しにくい運用」をしていけます。
覚えておくと便利ですよ。
乗換が有利になった2つの要因
今回の乗換事例では、権利行使価格が5.75円も下がりました。
相当有利な乗換です。
ちなみに、いつもこんなに有利になるとは限らないです。
昨年までは、5円以上も有利になるような乗換は、あまり見たことがありません。
この有利になった要因は二つあると思われます。
- 為替相場のボラティリティ上昇
- 米国金利上昇
両方とも、FXオプションのプレミアム価格上昇に大きな影響を与える要因です。
米ドル円は、2022年に入り大きく動き続けています。これに米国の大幅な利上げが加わり、有利な乗換が出来るようになっていると推測されます。
今後、ボラティリティが下がる局面はあると思われるのですが、米国金利自体は高目で推移すると思われます。
そういう意味では、今後も「有利な乗換」が出来る時期が続くかもしれません。
最後に、プット売りからプット売りへの乗換のメリットデメリットを整理します
乗換のメリット:権利行使価格が有利になる
乗換後のポジションでは、権利行使価格が5.75円有利になります。
これは、大きなメリットです。
米ドル円が大きく動くとはいっても、短期で5円も下げることは稀です。
下げ気味に推移しそうな局面でも、この乗換はかなり有効に機能してくれそうです。
乗換のデメリット:満期までの期間は延びる
権利行使日まであと1週間だったのが、5カ月以上先まで伸びるのは、ちょっと気が遠くなるかもしれません。
実際、毎日相庭をみながら待ち続けるのは結構な苦痛だったりします。
なので私は、こういう乗換をした後は、ほとんど口座ログインして状況をチェックするようなことはしないようにしています。
不思議なもので、ポジション見ないと気にならなくなります。
権利行使価格など仕掛けた値は、帳簿に記入してあるので、気になるときはその帳簿で確認します。
この辺が我慢できないようであれば、この乗換は使用しない方が良いです。
プット売りの含み損は一時的に増加する。
今回の乗換では、乗換時に差引10万円くらい受取れます。
これらは、乗換後のポジションに引き継がれる形になるので、乗換後のポジションの含み損は一旦増加します。
でも、心配は要りません。
5カ月半の権利行使日に、米ドル円が権利行使価格まで下げなければ、このプレミアムも日数経過とともにゼロに近づいていくからです。
乗換できない時もある。
稀にですが、この乗換が出来ないことがあります。
プット売りの長期となる権利行使日のオプション値が提供されない現象がたまに起きるためです。
例えば、為替相場全体が大荒れとなっている時です。
現在の高ボラティリティ相場が更に行き過ぎすると起きる可能性があります。
そういう時は、プレミアムが提示されなくなるので、新規ポジションが作れません。
この現象は、トルコリラなど流動性の低目で人気が偏りやすい新興国通貨ペアでたまにおきます。
世界的メジャー通貨ペアでもある米ドル円では、ほとんど起こったことがないものの、絶対ない訳ではないということだけは、意識しておかれてくださいませ。
FXオプション講座2022 目次
- 第1回:コール買い プット買い 小資金で大儲けの理屈と落とし穴
- 第2回:コール売り・プット売りが勝ち易いのはなぜか?
- 第3回:「売り」で負けることもある 現実の事例
- 第4回:オプションの権利行使価格の見方使い方
- 第5回:最大損失を減らす方法 リスク調整その1
- 第6回:損しにくくする方法 リスク調整その2
- 第7回:インフレ対策にコール売りを使う
- 第8回:荒れ相場でFXオプションで起こる3つの現象
- 第9回:FXとFXオプション比較 6つの売買の復習
- 第10回:まちぶせ戦略・・利益を取りながら目標値まで待つ
- 第11回:一攫千金戦略・・大変動期で大きく狙う
- 第12回:ビッグヘッド戦略・・・長期目線での上げ相場狙い
- 第13回:ツインドラゴン戦略・・・攻撃力2倍で攻める
- 第14回:キングギドラ戦略・・・3倍の凄さとデメリット
- 第15回:ストラングルの売り・・高ボラティリティに仕掛けるメリット
- 第16回:損きりすべきときにしなかった実例
- 第17回:カバードコール戦略の特徴と仕掛け方
- 第18回:リアル運用:カバードコール戦略体験談
- 第19回:乗換技その1:買いポジションの含み損を減らす方法
- 第20回:乗換技その2:下げ相場で有利なポジションを作る方法
- 第21回:現実のポジション解説:下げ相場で有利なポジションを作る方法
- 第22回:乗換の技 その3 売りポジションの含み損を減らす方法
- 第23回:乗換の技 その4 コール売り⇒コール売り
- 第24回:乗換の技 その5 プット売り⇒プット売り
- 第25回:コール売り⇒プット売り 方向転換したいときの乗換
- 第26回:利益出しやすいFXオプション 成績公開しない理由
ここで使っているFXオプション口座はサクソバンク証券です。