プットオプション売り FXよりも損失が減らせる仕組み
4つの注文、最後はプットオプション売りです。
スワップ投資と相性の良い注文方法です。この運用法でも「FXポジションを有利に作る」ために使っています。
いろいろと書きたいことがあるので、2回に分けて書かせていただきます。
プットオプション売りースタートで使う注文
この運用法では、プットオプション売りからスタートすることとがよくあります。
こうすることで、スワップ投資を有利していく効果が期待できるためです。
まずは、プットオプション売りの内容把握から始めましょう。
プットオプションの概要は下記ページでもまとめています。
参考記事:プットオプション売り概略
概略を大まかに理解されたら、注文画面でプットオプション売りについてみてみましょう。
クリックすると拡大します。
薄赤色部分で注文を出すと、以下のポジションが発生します。
- ポジション作成時点の米ドル円値は、108.476円
- 権利行使日:2020年1月8日
- 権利行使価格:108.00円
- プレミアム :0.722
- プレミアム代金:0.722×10万通貨=72,200円
- 損益分岐点:108.00ー0.722=107.278円
「売り」ですので、ポジションを作成したときにプレミアム代金を受取ります。
この場合、ポジション作成時に72,200受取です。
このポジションを元に、プットオプション売りの全体像をみていきましょう
プットオプション売りの全体像
このポジションの主なポイントを列挙して、そのあとで説明という流れでまいります。
- 「売り」なので「利益限定・損失限定なし」となる。
- 「米ドル円買いポジション」と同じ性質
- 米ドル円上昇なら利益・下落なら損失となるポジション
- どんなに上昇しても利益上限は72,200円
- FXの米ドル円証拠金取引と同じ資金が必要になる。
- 満期日に108.00円以下であれば決済(清算)時に損失
- 仕掛け時のプレミアム受取による利益+決済時の損失と合計して最終損益確定
- 損益分岐点の107.278円よりも下落すると最終損失確定
プットオプション売りは、利益限定・損失限定なしというポジションです。
米ドル円上昇なら利益となり下落なら損失ですので「米ドル円買いポジション」と同じ性質になります。
利益上限は、最初に受け取ったプレミアム代金72,200円です。
このポジション作成には、FXの米ドル円売買と同じ証拠金が必要になります。含み損が大きくなる可能性もあるため、余裕を持たせた資金配分をせねばなりません。
満期日に108.00円以下であれば決済(清算)時にプレミアム価値分の損失がでます。
仕掛け時のプレミアム受取と精算時のプレミアム支払を合計して最終損益が確定します。
- 最終損益計算式:仕掛け時プレミアム受取+精算時プレミアム支払
この計算式でいくと損益がゼロになる損益分岐点は107.278円です。
- 満期日に107.278円よりも上昇すれば最終利益
- 満期日に107.278円よりも下落すれば最終損失
プットオプション売りは、こんなポジションです。
以上の状況から、特長をまとめておきましょう。
プットオプション売り 損益の特長
- 「利益出やすく、損失は出にくい」ポジション
- 利益はプレミアム代金に限定される
- 上げ幅の小さい往来相場や上げ相場に向く
先程のポジションは、米ドル円108.476で仕掛けたものです。損益分岐点は107.278円ですので、1.198円下げない限り利益が確保できます。
これって、利益になりやすいですよね。
ただ、利益上限が決まっているので、プレミアム受取額以上の利益にはなりません。
上げ幅の小さい往来相場や上げ相場に向くポジションです。
損失上限がないということで恐怖を持つ方もいるかもしれません。
参考までに、どれくらいの損失が出るか計算してみましょう。
その損失をFXとの比較でみてみます。
FXと比較 損失が大きく出るパターン
このプットオプション買いのときと同様、「米ドル円が95円まで下げたらどうなるか」という前提で試算をしてみましょう。
- ポジション作成時のプレミアム受取 72,200円
- 下落幅:権利行使価格108.00円ー95円=13.000円
- 満期日の損失額:13.476円×10万通貨=ー1,300,000円
- 最終損益:ー1,300,000円+72,200円=1,227,800円損失
大きく下げれば、それなりの大きな損失になります。
でも、ちょっと待ってください。
もしもですが、この下げ相場をFXで米ドル円売りポジションを持っていたらどうなっていたでしょう。
- 108.476円で売りポジション10万通貨
- 下落幅:108.476円ー95円=13.476円
- 損失額:13.476円×10万通貨=1,347,600円損失
- これにマイナススワプポイント負担も有り
つまり、こうなるんです。
- FXの場合:1,347,600円損失
- FXオプションの場合:1,227,800円損失
同じ損失ではあるものの、FXオプションの方が損失が少なくなるんです。マイナススワップポイント負担を考慮しない段階で、12万円くらい少ないですよね。
プットオプション売りは、損失限定がないとはいえ、FXよりも損失を減らせるという効果もあります。
私はこの効果を「損失抑制効果」と呼んでいます。
参考記事:損失抑制効果とその「限界」のまとめ
売買でもこの効果は有効に使っていきます。
米ドル円買いポジションを安値で作っていく仕組み
プットオプション売りは、権利行使日に一定条件が揃うと「FXの買いポジション」に変換するようになっています。
この仕組みを活用していくことで、「買いポジションを安値で作る方法」としても使えます。
満期日以降FXポジションにする場合
プットオプション売りも満期日以降FXポジションに変更して保有ができます。
発生するのは、米ドル円買いポジションです。
「行使方法」をスポットにしておいて、「米ドル円が行使価格未満」になったときに米ドル円買いポジションが発生します。
スポットの説明:「途中決済」「スポット」「キャッシュ」の違い
この仕組みは、「買いポジションを安値で作る方法」として使えます。
今回のケースで考えると、108.476円で米ドル円買いポジションを作ろうとしたとします。
自分としては、「108.476円が底だと思っている」ような状況です。でも、現実にはそのあと下げてしまうようなことはよくあるものです。
この時、FXポジションではなくて、権利行使価格108円のプットオプション売りを仕掛けたらどうなるでしょう。
もしも、下げる展開となれば満期日には「108円の米ドル円買いポジションが発生します。
プレミアム72,200円の受取もそのままです。
権利行使日に米ドル円が108円未満であれば、108円の米ドル円買いポジションが発生します。
この状況をFXで単純にポジションを作った場合と比較してみましょう。
- FXの場合:108.476円の買いポジション
- プットオプション売り:108円の買いポジション+72200円受取
「下げた場合」には、単純に108.476円でFXの米ドル円買いポジションを作るよりは有利です。
72200円のプレミアム受取はスプレツド換算で72.2銭に相当します。
プレミアム部分を考慮した場合の買値
- 108−0.722=107.278円
FXで単純に買った場合の108.476円に比べると、1.198円買値を有利になっていることになっています。
実際に、この方法で何度かポジションを作っています。
このように、やり方次第で2円くらい下げることができます。
本当のデメリットは上昇時?
この方法、良いことばかりではありません。
下げた時には、「買い平均値を有利」にできるのですが、上げたときには別の意味で悲しいことも起こりえます。
それは「大きく上昇した時」です。
「利益」はあるんです。でも、プットオプション売りは「利益限定」なのです。
先程のケースで、米ドル円が5円・10円と上昇した場合、FXでの米ドル円買いポジションであれば利益をどんどん大きくできます。
でも、プットオプション売りの利益は限定されています。どんなに上昇しても利益上限は72,200円より増えることはありません。
先程、「別の意味で悲しいこと」と書いたのは「大きく利益が出る局面となったときでも利益が限定されてしまう」ということです。
権利行使日になっても「インザマネー」ではないので、FXポジションが発生することもありません。
1円程度の上げ相場であれば、それほど気にすることはありませんが、5円・10円の大きな上昇を取り損なうのは辛いですよね。
プットオプション売りを使う際は、この辛い部分も意識していかねばなりません。
この運用法でも、この方法を定期的に使っていきます。
「FXオプションからのスワップ投資」での使い方
- 下げ止まり近いところで仕掛けていく。
- 下落:「米ドル円買いポジション」として保有予定
- 上昇:プレミアム利益受取のみ
仕掛けは、米ドル円が下げ止まり近いと感じるところで行います。
米ドル円買いポジションを作るタイミングと同じ感覚です。確率的には、そのまま上昇して利益になることが多くなるはずです。
ただ、下落した場合はそのままFXでの米ドル円買いポジションとして保有していきます。
こうしていくことで「FXよりも安値で買いポジション」を作りやすくなります。
こうやって、安値で買いポジションを丁寧に作っていけば、大きな目の下げ相場でも大きな含み損に苦しむことは少なくなるはずです。
この運用法では、この部分を重視してやっていきます。
プットオプション売りを仕掛けた後に、大きく上昇することもあるかもしれませんが、それはやむを得ないこととして諦めます。
それよりも、長くスワップ投資を安心して受取続けられる「安値の買いポジション作り」に専念します。
長い目でみれば、こうすることで安値の米ドル円買いポジションが増えていくことで、将来の大きな利益につなげていけるという目論見です。
FXオプションからのスワップ投資 目次
- 第1回:FXオプションを使ってスワップポイント投資の安全性を高めた運用法
- 第2回:スワップポイント生活 低リスク+含み損減とできる方法実行中
- 第3回:FXオプション注文画面の見方「権利行使価格」「権利行使期日」「プレミアム」の仕組み
- 第4回:FXオプション プレミアム売買の仕組み
- 第5回:「途中決済」「スポット」「キャッシュ」の違い FXオプション決済方法
- 第6回:コールオプション買い「損失上限あり・利益上限なし」はこう使う
- 第7回:コールオプション売り「利益上限あり・損失上限なし」はこう使う
- 第8回:プットオプション買い 暴落相場をリスク限定で攻める有効な一手
- 第9回:プットオプション売り FXよりも安値でポジションが作れる仕組み
- 第10回:FXオプションからのスワップ投資 概観
- 第11回:スワップポイント生活の新しい形 手順1〜4
- 第12回:【準備】FXオプションからのスワップ投資 売買ルール編
- 第13回:【運用通貨選び】高スワップポイント手動は失敗の元
- 第14回:【運用資金目安】「リスク管理のための保有数量基準」について
- 第15回:【仕掛け方 3つの型】「一の型」「二の型」「三の型」考え方と基準
- 第16回:【FXオプション⇒FX変換後の運用ルール】 5つの攻め方
- 第17回:ポジション増のタイミング
- 第18回:FXオプション 運用上重要な基本事項 まとめ
- 第19回:「損するかもしれないリスク」と「大損するリスク」FXオプションで確実に軽減する方法
- 第20回:FXオプション 実践者が感じる4つのデメリット
- 第21回:「損失限定・小資金で勝負」「上げ相場でも下げ相場でもスワップ投資」
- 第22回:往来相場を狙うストラングル売り戦略 魅力と欠点
- 第23回:大きな変動相場を取るストラドル買い戦略 短期と長期 使い分けのポイント
- 第24回:低リスクで利益率10%戦略 概要と失敗時の対処法
- 第25回:FXオプションを使い始めてFXの成績も良くなったのはなぜ?
- 第26回:超高ボラティリティ相場で有効 ストラングル売り戦略
- 第27回:読者の声:スプレッド拡大期の対処について
- 第28回:FXオプションをFX投資家の「もう一つの収入源」にする
- 第29回:FXオプション失敗からの教訓【2020年3月】
- 第30回:玉帳記入徹底のすすめ FXオプション失敗からの教訓その1
- 第31回:FXオプションの玉帳記入方法
- 第32回:失敗しないためにログイン前に決めるべき3つの事:FXオプション失敗からの教訓 その2
- 第33回:特殊ルール追加と基本ルールの位置づけ:FXオプション失敗からの教訓 その3
- 最終回:スワップ派 もう一つの砦 ここまでの実績と今後の展開
- 参考資料:移動平均線とRSIを使用 MT4に設定する方法
最後まで読んでいただきありがとうございます。
FXオプションで使っているのはサクソバンク証券です。