その3:その真贋は長期間続けることでしか証明できない。
勝率100%のEAがなぜうまくいかなくなるか。わかりきった部分ではあるのですが、わかっていてもはまってしまう落とし穴がここにはあります。
MT4の落とし穴 勝率100%の魔力
絵に描いた餅というものは世の中いたる処に存在します。投資の世界には特に多いように感じます。
MT4の世界も同様で、いくら大きく稼いだことを宣伝していても実際に動かして同様に利益を出したという話は聞いたことがありません。
MT4のシグナルを使った売買も同様で、それが現実の利益を産み出すようにするにはリアルトレードを通じて現実的なルールなどを整備していく必要があります。
MT4 バックテストの限界
MT4でのバックテスト機能のお蔭で、相性の良いテクニカル指標探しが更に手早くできます。ただ、やはり完璧はありません。最近も以下のようなことがありました。
これは、MT4のバックテストでは勝率100%の結果を出している自作EA売買シグナルを使った売買です。過去のデータでいけば、30銭くらいは利益幅が取れるはずなのですが、いつもとは様子が違うので収支トントンで決済しています。
この後、南アフリカランド円は大きく崩れています。今後戻ってくるのかもしれませんが、危機一髪でした。このポジション決済して暫くしてから、売りポジションを乗せていています。
これも先日無事決済しています。
参考:建玉整理の裏技 60万円の利益を26万円に減らした理由
利益を減らしたのは、そのまま他の運用法のポジションを入れ替えただけです。この売買の利益額は、予定通りのものでした。EAのシグナルを使った売買では、この辺のさじ加減が必要となります。いつまでも過去の「決済値」や「損きり値」が通用する訳ではないからです。
為替値水準が違ってくるケース
為替値水準が違ってくるケースで、わかりやすいのが南アフリカランド円です。
MT4では、2008年頃からの為替データを使ったバックテストができます。ヒストリカルデータが充実している業者さんであれば、2005年ころからのバックテストが出来るかもしれません。
いずれにせよ、南アフリカランド円値は今とは全然違うんですよね。
- 2006年1月1日 18.485円
- 2008年1月1日 16.185円
- 2011年1月1日 12.151円
- 2016年1月1日 7.754円
あと一下げして6円台前半になると、10年間で為替値が3分の1になりますね。こういう通貨では、仮に「利益確定40pips」「損きり60pips」でバックテスト上大きく稼いでくれそうなEAが作れたとしても、それが今後も通用するとは思えません。
「10年前と2016年とでは値幅の重みが違うからです」
2006年段階での40pipsの重みを計算してみましょう。
- 40pips÷18.485円=2.1
投資は、2.1%程度の重みでした。
では、2016年1月段階ではどうでしょう。
- 40pips÷7,754円=5.15%
同じ40pipsの値幅でもその重みは2倍以上となっていますね。為替値が、大きく動けば勝つための諸条件も違ってくることになります。
MT4で出来るのは過去値による検証です。非常に有意義なものではありますが、その弊害に留意して活用しなければいけません。
私の経験上、この手の売買でもっとも注意すべきは「勝率100%の自作EA」です。この手のEAは、マズイと思う局面でも「このEAは勝率100%だから大丈夫」と信じたくなるからです。
当然のことですが完璧なEAはありません。
私は「保有日数」などの自己ルールを作ったりして、この辺に対応しています。100万円くらい利益が取れそうでも、保有日数が規定以上に長くなってしまったら、利益幅が小さくても決済する感じです。
ちなみに、昔と為替値が大きく違う南アフリカランド円を例に出させて頂きましたが、為替値水準がそれほど変わっていない通貨でも過去値と現在値ではいろいろと違いがでてくるようです。
去年の交流会でも、「2008年を境にEAの成績が大きく変化している」という指摘をしている方もいました。MT4でシグナルを利用するときは、「いつか駄目になる可能性」は持ち続けておく必要があるだろうと思っています。
MT4使い方2016 目次
「MT4使い方2016」の目次です。
- 第1回:MT4 成功と失敗 3年間の振り返り
- 第2回:MT4に不可欠VPS 無料と有料とメモリの話
- 第3回:MT4失敗例その1:優秀な成績のEAで失敗
- 第4回:MT4失敗例その2:データ不足のバックテストで失敗
- 第5回:MT4失敗例その3:スプレッド拡大時に刈り取られる
- 第6回:MT4失敗例その4:ポジションを増やすタイミングを誤る
- 第7回:ミラートレーダーで得たMT4教訓
- 第8回:MT4 VS ミラートレーダー比較
- 第9回:MT4失敗例 その5:自作EAの可能性と壁
- 第10回:MT4 完全自動売買と半自動売買 2つの使い方
- 第11回:MT4シグナルを使用した半自動売買
- 第12回:投資で儲ける2つの方法 裁量トレードで勝つための鉄則
- 第13回:MT4自動売買の勝機 20年以上前から抱き続けた夢の実現
- 第14回:MT4で検証 その2:絶対はないが相性の良いシグナルは存在
- 第15回:MT4の落とし穴 勝率100%の魔力
- 第16回:MT4最適化の呪縛と利用法
- 第17回:MT4商用EA 2つの基本事項
- 第18回:MT4 長期運用の原則
- 第19回:MT4自動売買 利益期日目標はなぜNGなのか?
- 第20回:MT4商用EA選び 4つのポイント
- 第21回:MT4商用EA損益グラフ 2つの理想形
- 第22回:PF(プロフィットファクター) MT4商用EAで留意するポイント
- 第23回:MT4自動売買隠れコスト スワップポイント差コストへの対応
- 第24回:自動売買スワップポイント差負担軽減 2つの策
- 第25回:MT4で多頻度売買EA 体験談
- 第26回:MT4 理想のエントリーパターン2016
- 第27回:MT4 EAに休みは必要なのか?
- 第28回:MT4EA 個別売買ルールの中身
- 第29回:その1:1000通貨スタートの原則 MT4安全運転7原則
- 第30回:その2:1MT4 1EA MT4安全運転7原則
- 第31回:その3:稼働EAを一気に増やさない MT4安全運転7原則
- 第32回:その4:資金を限定する MT4安全運転7原則
- 第33回:その5:EAに期待し過ぎない MT4安全運転7原則
- 第34回:その6:絶不調時にEAを止めない MT4安全運転7原則
- 第35回:EA絶不調 夜明け前が一番暗いは本当なのか? MT4安全運転7原則
- 第36回:その7:売買数量を増やすタイミング MT4安全運転7原則
- 第37回:売買数量増加 留意している4ポイント MT4安全運転7原則
- 最終回:MT4長期利用者たちの共通点と感じること