FXオプション基本事項 まとめ
連載の締めくくりとして、FXオプションについて、大まかな特徴やメリット・デメリットについてまとめていきます。
この連載で書き忘れている部分などあるかもしれないので、復習をかねて読まれて下さいませ。
FXオプションの特長
- FXオプションは権利の売買「仕掛け」「決済」両方で損益が発生する。
- ポジションの種類は4つある。
- FXと組み合わせれば6つの攻め方が可能となる。
- 上げ相場狙いの攻め方は2種類ある。
- 下げ相場狙いの攻め方は2種類ある。
- 「買い」は「損失限定・利益限定なし」という性質を持つ。
- 「売り」は「損失限定なし・利益限定」という性質を持つ。
- 「買い」は最終損失になりやすく、「売り」は最終利益になりやすい。
- 権利行使日以降「FXオプション⇒FXポジション」に変換ができる。
ここを読んで「そうそう、そうなんだよね」と思われた方もいれば、「え?どういう事?」と思われた方もいるかもしれません。
いずれもFXオプションの基本部分ですので、しっかり復習していきましょう。
FXオプションは権利の売買「仕掛け」「決済」両方で損益が発生する。
FXとFXオプションの大きな違いは、FXがレバレッジを効かせた証拠金取引なのに対してFXオプションが「権利」を売買する取引ということです。
複雑な話はさておき・・・これによって、売買したときの資金のやり取りが違ってきます。
FXでは、資金のやり取りは「決済」のときだけです。
でも・・・
FXオプションでは、資金のやり取りは、「仕掛け」と「決済」の両方で発生します。
「買い」から始めた場合の資金の流れはこうなっています。
- 仮定:コールオプション買い・・プレミアム代金50000円
仕掛け:プレミアム代金50000円支払い(損失計上)。
決済時のプレミアム代金10000円だったとして・・・⇒決済:プレミアム代金10000円受取(利益計上)
最終損益:50000円損失ー10000円利益=40000円損失
この売買は最終的に40000円損失だったということになりますね。
資金の流れは、こんな感じになります。税金計算上の損益は、「仕掛け」「決済」の両方で発生します。このポジションの最終損益は、「仕掛け」と「決算」の損益を合計して考えます。
「売り」から始めた場合はこうなります。
- 仮定:コールオプション売り・・プレミアム代金50000円
仕掛け:プレミアム代金50000円受取(利益計上)
満期時のプレミアム代金10000円だったとして・・・決済:プレミアム代金10000円支払(損失計上)
「売り」から始めた場合の資金の流れは「買い」の逆になります。
「仕掛け」で利益を出し「決済」で損失を出すという流れです。この場合の最終損益も計算してみましょう。
最終損益:50000円利益ー10000円損失=40000円利益
「コールオプション買い」の時は40000円の損失、「コールオプション売り」の時は40000円の利益、です。
FXオプションのスプレッドを考慮しなければ、全くの同条件であれば最終損益も「買い」と「売り」では真逆となります。
いずれにしても、FXオプションは「仕掛け」「決済」の両方で損益が出るという流れは同じです。
つまり、こうなります。
- 仕掛けの損益
- 決済の損益
- 最終損益=仕掛けの損益+決済の損益
FXオプションは、利益の出方・損失の出方がFXとは違います。
この違いもきっちり把握しておきましょう。
FXオプションのポジションは4種類ある
FXのポジションは「買い」と「売り」の2つのみです。これに対して、FXオプションは4種類のポジションがあります。
- コールオプション買い
- コールオプション売り
- プットオプション買い
- プットオプション売り
「コールオプション=買う権利」と「プットオプション=売る権利」があり、それぞれに「買い」と「売り」があるので合計4種類になります。
4種類のポジションがあるため、「上げ相場」「下げ相場」ともに攻め方に変化が出せます。
FXと組み合わせれば6つの攻め方が可能となる。
この4つは、それぞれ「FXでの売りと買い」とは別の性質を持ちます。
なので、FXと組み合わせて使うと、FXオプション4種類+FX2種類=6種類のポジションとなります。
同じ為替相場を攻略する方法が、FX単独では「売り」と「買い」の2種類しかないのに、FXオプションも活用することで6種類です。
FX+FXオプションで為替相場の攻め方が6つに増えるということです。
おお、なんか楽しい感じだな。
ああ、最初はちょっと大変ですけどね。
慣れてしまえばかなり有効です。
ただですね。
FXオプションは、権利行使価格や権利行使日などの選択肢が多いので、臨機応変に使い分けていくのはちょっと難しいところがあります。
プットオプション買いを仕掛ける・・・といっても、権利行使価格・権利行使期日によって様々な種類があります。
慣れるまでは相当悩むはずです。
だからこそ、私がオススメなのは、「あらかじめ使う基準を決めておく」やり方です。
- 使う局面
- 使うポジション
- 権利行使価格・権利行使期日の目安
- 仕掛けるプレミアムの目安
これらを予め決めておきます。
今回の連載で私が書いてきた使い方です。
例えば、「仕掛け」では3つの型を用意しています。
これら3つの型に入るような時期と判断したら、そのルールに基づいて使うFXオプションを決めていきます。
基準を決めるといっても、最初はどうしてよいかわからないはずです。
慣れるまでは私の基準を参考にやりながら、自分なりの形を作っていくのもよいかなと思います。
上げ相場狙いの攻め方は2種類ある
FXオプションで「上げ相場で利益を出す」方法は2つあります。
- コールオプション買い
- プットオプション売り
参考:コールオプション買い
参考:プットオプション売り
「FXの買い」も入れると、「買いで3つの攻め方」が選べることになります。
2つの方法は、それぞれ「利益」「損失」「利益になりやすいかどうか」などが違ってきます。
- 利益限定なし
- 損失限定
- 必要資金:プレミアム代金のみ
- 確率的に利益になりにくい
コールオプション買いは、大きな上げ相場となれば、大きな利益をだしていくれる可能性のあるポジションです。
見込みがはずれて下落した場合でも損失は限定されていて、ポジションを保有するための必要資金も少額で済みます。
権利行使価格や権利行使期日によっては、米ドル円10万通貨分のポジションを1万円程度で保有することもできます。
この場合、必要資金・損失上限共に1万円で済みます。
ここまでは良いことばかりですよね。
無論、これらのメリットに対応するデメリットもあり、それが「確率的に利益になりにくい」という部分です。
ポジションの作り方にもよるのですが、勝率50%以上のポジションを作れることはほとんどありません。
ここでの確率50%というのは、「米ドル円が現在値のまま推移すれば収支トントン」という状態をいいます。
コールオプション買いは、ほぼ確実に「米ドル円が現在値のまま推移すれば損失」になるという宿命を背負っています。
- 利益限定
- 損失限定なし
- 必要資金:FXの必要証拠金と同じ
- 確率的に利益になりやすい
コールオプション買いと同様に「上げ相場で利益・下げ相場で損失」ではあるものの、利益は限定されて損失限定がないという性質になるのがプットオプション売りです。
必要資金もFXで同数量のポジションを持つときと同様の証拠金が求められます。
プットオプション売り10万通貨のポジションを保有するときは、FXでの米ドル円買いポジション保有時と同額の必要証拠金ということです。
しかも、損失は限定されないので含み損となれば必要証拠金だけでは足らないこともあります。
ここまではちっともよくない感じですよね。
でも、「確率的に利益になりやすい」んです。
米ドル円が現在値近辺で推移すれば、ほぼ確実に利益を確保できるようなポジションになります。
利益になりやすいかどうかは、ポジション作成時の権利行使価格・権利行使期日の選択によって大きく変わります。
ここでは「一般的な傾向」として説明しています。
下げ相場狙いの攻め方は2種類ある。
買い同様に、FXオプションで「下げ相場で利益を出す」方法も2つあります。
- コールオプション売り
- プットオプション買い
参考:コールオプション売り
参考:プットオプション買い
「FXの売り」も入れると、「売りで3つの攻め方」が選べます。
つまり、こういうことになります。
- FXでの売りポジション
- コールオプション売り
- プットオプション買い
下げ相場で利益をだせるとはいっても、単純なFXの売りポジションに比べると、他の2つは様々な違いがあります。
- 利益限定
- 損失限定なし
- 必要資金:FXの必要証拠金と同じ
- 確率的に利益になりやすい
コールオプション売りは、「利益限定・損失限定なし」で、必要となる資金もFXでと同じとなります。
一見、とっても不利な感じがするのですが、その代わり「確率的に利益になりやすい」のです。
例えば、米ドル円110円のときに権利行使価格110.50円でのコールオプション売りを仕掛けたりできます。
仮にプレミアムが0.3だったとすれば、そのポジションは、110.50+プレミアム0.3=110.80円までは最終利益を確保できるポジションとなります。
うまく使えば、軽いお小遣い稼ぎの手段としても有効です。
その逆の性質を持つのがプットオプション買いです。
- 利益限定なし
- 損失限定
- 必要資金:プレミアム代金のみ
- 確率的に利益になりにくい
プットオプション買いは、「利益限定なし・損失限定」であり「必要資金はプレミアム代金のみ」です。
コールオプション買いと同じように、1万円で10万通貨の仕掛けをすることも可能です。
大きなリスクを取らずに、お手軽に少額で勝負できるのですが、最終的に利益を確保するのは難しいポジションが多くなります。
確率的に利益になりにくいのです。
個性豊かな6種類のポジション
FX+FXオプションで作れる6種類のポジションは、それぞれがとても特長的で個性豊かです。
相場局面に合わせて使いこなしていければ、私達投資家の大きな力になってくれます。
リスクの調整が自分でできる
FXオプションは、投資家がリスクを選択して運用していくことができます。
米ドル円現在値が110円だったとしましょう。
FXであれば、「売り」「買い」ともに110円で売買するしか選択肢はありません。
FXオプションは、現在値が110円でも権利行使価格109円や106円の売買ができます。
事例その1:損失まで2円以上の余裕を持たせる
これは、米ドル円値が108.450円のときに権利行使価格106円のプットオプション売りを仕掛けたものです。
プットオプション売りですので「上げれば利益・下げれば損失」で「損失限定なし・利益限定」という性質を持ちます。
「下げれば損失」なのですが、この仕掛けの損益分岐点は、105.644円です。
権利行使価格106円ープレミアム0.356=105.644円
3月25日の権利行使日に米ドル円が105.644円以上の水準であれば最終利益を確保できます。
米ドル円が108.450円のときに105.644円より下げない限り利益になるポジションです。
こうすることで・・・
損するリスクは一般のFXポジションに比べると相当低くできます。
この参考例で紹介したポジションは、「リスクを抑えてスワップポイント部分を着実に取っていく」という発想で仕掛けたものです。
リスクを抑えながら攻めていきたい方は、これと似たような形にすることで同じように低リスクでの運用が可能になります。
事例その2:「損失を少なく」して「大変動」に備える仕掛け
先程とは別に「利益を出す可能性は低くなる」けど「万が一の大変動」に備えるような仕掛け方もできます。
この中での「プットオプション買い 30万通貨」部分です。
これは、2020年1月に米国とイランとの間で戦争になるかもしれないと言われた時期に「万が一の米ドル円大暴落」に備えて仕掛けたポジションです。
米ドル円107.866円のときに権利行使価格107円のプットオプション買いを入れています。
プットオプション買いですので、「下げれば利益・上げれば損失」で「利益限定なし・損失限定」という性質を持ちます。
大きく下げるようであれば利益になるのですが、下げなければ最終損失になる「利益を出しにくいポジション」です。
もしも、この後に大きく下落するようであれば、このポジションが大活躍してくれる可能性がありました。
結局、そのあとは下げていないため、このポジションは最終損失になりそうな状況です。
それでも、どんなに上げても損失額は増えることはありません。
こういう感じでリスク調整したポジションを作れます。
リスク調整 4つのポイント
FXオプションでリスク調整をするときのポイントは4つあります。
- コールオプションとプットオプションの選択
- 「買い」か「売り」かの選択
- 権利行使価格
- 権利行使期日
最初の2つについては既に何度も書いてきています。
上げ相場を攻めるとき、FXオプションでの選択肢は2つあります。
一般的に「買い」の方が損失リスクは高目になり、「売り」の方が損失リスクは低目になります。
これらのリスクをさらに下げるか下げるかは、権利行使価格と権利行使期日で調整します。
「権利行使価格」を現在値より話すことでリスクは大きく変化します。
米ドル円110円の時に、権利行使価格106円のプットオプション売りを仕掛ければ米ドル円が106円を割らない限り損をしない「利益を出しやすいポジション」になります。
満期日である「権利行使日」を調整することで、「得られる利益」や「失う損失」も選択できます。
FXオプションでは、プレミアム価格決定要素に「時間的価値」があります。
権利行使日が長くなれば長くなるほどプレミアムが大きくなる一番の要因が時間的価値です。
「売り」方は、このプレミアムを受け取る側ですので、権利行使日が長くなればなるほど利益も大きくできます。
ただ、権利行使日までの日数が長くなればなるほど、大きな為替変動が起きる可能性も高まります。
「権利行使日」を決める際には、その辺の想定もしながら行います。
権利行使日以降「FXオプション⇒FXポジション」への変換
FXオプションは、一定条件を満たすと、そのままFXポジションに変換して保有し続けることができます。
この記事の「その3:権利行使日(満期日)到来によるFXポジションへの変換」の部分です。
私が良く使うパターンは、これです。
- プットオプション売り⇒FX買いポジション
プットオプション売りポジション作成時に受け取ったプレミアムは、そのままですので、使い方次第で「安値で買いポジションを作る方法」としても活用できます。
実際に、これまでも実際よりも2円くらい安値の米ドル円買いポジションを作ったりしてきています。
いろんな仕組みを持つFXオプションは、FXを補完する使い方をすることで、私達投資家にとって有益なものとして活用していけます。
これからも、その魅力を伝えていければと思っています。
FXオプションからのスワップ投資 目次
- 第1回:FXオプションを使ってスワップポイント投資の安全性を高めた運用法
- 第2回:スワップポイント生活 低リスク+含み損減とできる方法実行中
- 第3回:FXオプション注文画面の見方「権利行使価格」「権利行使期日」「プレミアム」の仕組み
- 第4回:FXオプション プレミアム売買の仕組み
- 第5回:「途中決済」「スポット」「キャッシュ」の違い FXオプション決済方法
- 第6回:コールオプション買い「損失上限あり・利益上限なし」はこう使う
- 第7回:コールオプション売り「利益上限あり・損失上限なし」はこう使う
- 第8回:プットオプション買い 暴落相場をリスク限定で攻める有効な一手
- 第9回:プットオプション売り FXよりも安値でポジションが作れる仕組み
- 第10回:FXオプションからのスワップ投資 概観
- 第11回:スワップポイント生活の新しい形 手順1〜4
- 第12回:【準備】FXオプションからのスワップ投資 売買ルール編
- 第13回:【運用通貨選び】高スワップポイント手動は失敗の元
- 第14回:【運用資金目安】「リスク管理のための保有数量基準」について
- 第15回:【仕掛け方 3つの型】「一の型」「二の型」「三の型」考え方と基準
- 第16回:【FXオプション⇒FX変換後の運用ルール】 5つの攻め方
- 第17回:ポジション増のタイミング
- 第18回:FXオプション 運用上重要な基本事項 まとめ
- 第19回:「損するかもしれないリスク」と「大損するリスク」FXオプションで確実に軽減する方法
- 第20回:FXオプション 実践者が感じる4つのデメリット
- 第21回:「損失限定・小資金で勝負」「上げ相場でも下げ相場でもスワップ投資」
- 第22回:往来相場を狙うストラングル売り戦略 魅力と欠点
- 第23回:大きな変動相場を取るストラドル買い戦略 短期と長期 使い分けのポイント
- 第24回:低リスクで利益率10%戦略 概要と失敗時の対処法
- 第25回:FXオプションを使い始めてFXの成績も良くなったのはなぜ?
- 第26回:超高ボラティリティ相場で有効 ストラングル売り戦略
- 第27回:読者の声:スプレッド拡大期の対処について
- 第28回:FXオプションをFX投資家の「もう一つの収入源」にする
- 第29回:FXオプション失敗からの教訓【2020年3月】
- 第30回:玉帳記入徹底のすすめ FXオプション失敗からの教訓その1
- 第31回:FXオプションの玉帳記入方法
- 第32回:失敗しないためにログイン前に決めるべき3つの事:FXオプション失敗からの教訓 その2
- 第33回:特殊ルール追加と基本ルールの位置づけ:FXオプション失敗からの教訓 その3
- 最終回:スワップ派 もう一つの砦 ここまでの実績と今後の展開
- 参考資料:移動平均線とRSIを使用 MT4に設定する方法
最後まで読んでいただきありがとうございます。
FXオプションで使っているのはサクソバンク証券です。