最適化はカミソリ MT4EA作成編第17回
最適化はとても便利なのですが、最高に最適化された一見優秀なEAが実際に好成績をだすことはほとんどありません。大儲けのバックテスト結果を信じて稼動させて損の上塗りとなった経験は、多くのMT4ユーザーがもっています。ここでは、私がやっていて有効と思われる「最適化の使い方」をご紹介します。
2013年 マイナス成績の主因
2014年のMT4運用は5月末現在のところ20万円くらいのプラスです。昨年はマイナス成績で終わりました。昨年マイナス成績の主因は「過剰最適化したEAを中心に運用したこと」だったと反省しています。
前回書いたように、一見良い成績を出すEAが作れても稼動するとうまくいかないパターンを何度も繰り返しておりました。
参考:過剰最適化(カーブフィッティング) MT4で必ずハマる落とし穴
昨年の反省の元、最適化の役割を今年は変えています。
最適化のマイナス成績もチェック
一般的な最適化の使い方は、「良い成績の数値の組合せをみつける」のが中心だと思われます。私は、最適化をEAの基礎的優劣をみる指標として使っています。具体的には「マイナス成績の組合せ」も表示させて全体の割合をチェックしています。
マイナス成績の表示については、以下のページを参考にしてください。
MT4の通常の設定では、最適化でプラスの成績を出せる組合せしかでてきません。でも、これが未来の成績を保証するものでないころは、先ほども書いたとおりです。でも、人間の気持ちはなかなか制御できません。
「未来の成績を保証するものではない」とわかっていても最適化でプラスの優秀な結果が沢山でてくると、「このEA凄いかも」という判断をしがちです。
マイナスを表示させることで、その見方が全く違うものになることがあります。具体的な事例でお話しましょう。
通常の設定で最適化して100のプラス成績がでてきたとします。
これをマイナス成績も表示する形にして最適化したとします。
事例1:
最適化で合計400通りが表示されて、そのうち100通りで利益がでている。
100通りの利益結果は、全体の25%にすぎない。
事例2:
最適化で合計100通りが表示されて、そのうち100通りで利益が出ている。
100通りの利益結果は、全体の100%になる。
同じ100通りの利益結果でも、事例1と事例2では評価は違ってきます。事例1は、全体の25%の組合せしか利益がでていないということなので、利益が出し易いEAとはいい難いです。これに対して事例2は、全体の100%が利益となる組合せということで、事例1に比べると利益が出し易いEAという判断ができます。
最適化をEAの基礎的優劣をみる指標にする
私は、この「利益の出る組合せの割合」をEAの基礎的優劣をみる指標としています。
基礎的優劣というのは、そのEAが長期間稼動させて利益をだしやすい傾向にあるかどうかという意味です。基礎がしっかりとしているEAは、最適化で数値を調整しても利益を出し易い傾向にあると思われるためです。私は、寿命の短い短期売買EAよりも長期間安心して稼動させられるEAを目標に開発しています。
裁量トレードに好不調があるように自動売買にも好不調があります。最適化して上位に並ぶ組合せは、その期間に好調だった組合せなので、他の期間では不調になって成績が悪化する可能性があります。
先ほどのマイナス成績を表示させての最適化で利益になる組合せが100%ということは、その期間ではどの数値の組合せでも利益が出せたということになります。
100%になるなんて滅多にないと思いがちですが、実はたまにあります。
「利益が出る組合せの割合」が100%になることは、それほど珍しくはありません。ただ、それで「絶対儲かる」という過信はしません。あくまでその期間内での最適化にすぎないからです。
100%のときは、他の期間でも最適化をして「利益の出る組合せの割合」を確認します。いかなる期間でも「利益の出る組合せの割合」が100%になることは今のところありませんし、多分将来もないだろうと思っています。
ただ、最適化をこういう使い方をすることで、「損をしにくいEA」を作れるようになった気がしています。
安心してEA稼動できるようになった
実際に2014年から稼動させているEAはこの最適化ルールを使っています。これ以外にもルールがいくつかあります。おそらくこれらの効果だと思うのですが、最近やっと安心してEAを動かしたままにできるようになりました。
昨年までは、EAが想定どおり動いているかいつも気になっていました。うまくいかないことが何度もあったので、ちょこちょこと入れ替えもしているためEAの実力がわからないまま切り替えてしまったものもあります。
MT4は、ちょっとEAが作れるようになるだけでも一見大儲けできそうなEAは比較的簡単にできてしまいます。でも、その多くは過剰最適化の産物です。
でも、最適化をすることでその通貨ペアにあった利益確定数値や損きり数値の目安もつきます。最適化のメリットは大きいため、それを活用しないのはとても勿体無いことです。最適化機能を有効活用できる方法は、今後も随時検討していくつもりです。
MT4EA作成編目次
EAを手軽につくるやり方をまとめました。
- 第1回MT4EA作成編 RSIEAの簡単な作り方
- 第2回手順その2 EAの売買ロジックを考える
- 第3回手順その3:EA加工前の準備 EAコピーの仕方
- 第4回基本EAの変更箇所確認
- 第5回30分でできるRSI MT4EA作成編
- 第6回MT4組み込みテクニカル指標関数の使い方
- 第7回MT4でRSIEAを作る 売買シグナル部分
- 第8回決済注文プログラムはたった1行
- 第9回マジックナンバーとRSIEA検証行
- 第10回パラメーターと変数化の効果
- 第11回RSI設定使い方 3つのパターン
- 第12回RSIエグジット戦略とは
- 第13回RSIスキャルピングにも使えるこの応用形
- 第14回RSI20 RSI80の検証
- 第15回RSIの使い方 3つのポイント
- 第16回過剰最適化(カーブフィッティング)の話
- 第17回最適化はカミソリ 大怪我しないためのポイント
- 第18回RSIEA無料配布と留意点
- 第19回決済を値幅指定
- 第20回ブレイクアウトMT4無料EA検証
- 第21回EA作成早期習得のための2つのポイント
- 第22回プログラムを短くする関数化
- 第23回「Breakout1SL1.mq4」をRSI値幅決済EAへ書換え
- 第24回コメントアウト MT4でも大切な理由
- 第25回EA解説後半 EA作成上達のコツ
- 第26回RSI値幅決済EA 短期売買向
- 第27回改造EAの面白いところ
- 第28回Breakout1TS1.mq4 1粒で三度おいしい無料EA
- 第29回大量売買防止方法
- 第30回MT4運用失敗の必然性に気づく
- 第31回最適化して最高成績を選ぶ愚
- 第32回MT4 PF(プロフィットファクター)
- 第33回MT4バックテスト 私の使い方
- 第34回MT4ファンのMT4口座比較方法
- 第35回裁量トレードの方が優秀に見える理由
- 第36回MT4最初の壁「夢の過剰最適化」
- 第37回MT4で儲からないことで目覚めた