専業トレーダーが税金上不利になる3つの理由
経験しないと納得できない部分もあるかもしれませんが、私が独立して辛く、苦しんだ部分でもあります。
専業トレーダーはなぜ不利なのか
前回の記事の補足です。
1200万円という目安に疑問に思われた方も多いかと思います。少なくとも私がサラリーマンの頃であれば、間違いなくこう思っていました。
「サラリーマンの税率はそんなに低くないぞ」
こう反論したくい方もいると思います。でも、現実です。
今回は、専業トレーダーの税金が高くなってしまうカラクリについて書かせていただきます。この辺の部分を理解しておくと、税金対策を考えるときなどに役に立ちます。まずは、合算税率表をご覧下さい。
この税率表をみると、所得330万円からは合算税率30%になるのでこの時点でFXの税率と逆転するはずと思ってしまいます。
でも、現実にはかなりのブレがあります。
このカラクリの原因は3つあります。
- 給与所得控除の有無
- FX利益に控除額なし
- 健康保険料の仕組みが違う
給与所得400万円のサラリーマンとFX利益400万円の専業トレーダーをモデルとして比較してみましょう。
必要経費0円・所得控除0円とした場合、FX利益だけが収入の専業トレーダーの課税所得はこうなります。
課税所得 = FX利益
サラリーマンの所得を同様の所得控除0円で計算式にするとこうです。
課税所得 = 給与所得 − 給与所得控除
ちょっと乱暴な比較ですが、同じ収入で税金などの負担が大きく違ってくることの説明資料ということでお許しください。この給与所得控除が結構な額なのです。
参考:給与所得控除 一覧表
給与所得400万円ある方で、給与所得控除が134万円あるので課税の出発点である課税所得は266万円となります。この他に所得控除などもあるので、実際の課税所得は更に低くなります。
これで税率が単純に20%であれば、266×20%=約53.2万円となります。
これに対して、FX利益だけが収入となる専業トレーダーは400万円の収入が出発点となっているので、単純に税率が20%であれば80万円となります。
参考:所得税・住民税 税率表
先ほどのこの表のなかで「控除額」というものがあります。一般の所得税の計算の場合は、税率をかけた計算結果からこの控除額を差し引きます。
先ほどの400万円の例でいくと20%の税率をかけて算出した53.2万円から97,500円の控除額が差し引けます。
532,000円ー97500円 =434,500円
これに対して、FX利益だけが収入となる専業トレーダーは分離課税20%のため控除額はありません。そのため80万円のままでその差は2倍くらいになります。
これに、「健康保険料の仕組みの違い」が加わります。ご存知のとおり、サラリーマンは「健康保険」で専業トレーダーは一般的に「国民健康保険」です。名前は似ていて両方とも3割負担と混同しがちですが、実はいろいろなところが違います。
FX利益との関連だけでみても両制度には大きな違いがあります。
健康保険の保険料は、給与所得によってきまる。つまり、FXでどれだけ利益を出しても健康保険料に影響はない。
国民健康保険料は、毎年の総所得で決まる。このため、FXで利益を出せば、それは国民健康保険料が上がる要因となる。
サラリーマンは、先ほどの434,500円に健康保険料負担が上乗せとはなりません。
でも、個人の専業トレーダーの場合は、先ほどの80万円に更に国民健康保険料負担増がのしかかってきます。この負担増は、専業トレーダーに他に収入がなく国民健康保険料負担の重い市町村にお住まいの場合は、年間30万円以上となる可能性もあります。
これらの負担は本当に重いです。
この計算をしていると、昔を思い出してしまい、記事を作っている私も憂鬱になってしまいます。この負担の重さから、専業トレーダーとしての独立は慎重にして欲しいと思っています。
FX税金2013 目次
- 第1回知るだけで差がつく FX税金2013年
- 第2回復興税で税金の増える人減る人
- 第3回fx税金払わないですむ3つの基準
- 第4回無税のはずが税金70万円の笑えない話
- 第5回無税範囲でやるFXのやり方 その1
- 第6回豪ドル円暴落のための備え
- 第7回FX確定申告必要書類まとめ
- 第8回税務調査 加算税減らす窮余の3策
- 第9回FX・株式税務調査 都市伝説
- 第10回FX税金は税率ではなく負担率 専業主婦36%
- 第11回専業トレーダー自営業のFX税金
- 第12回税金からみた専業トレーダーになる目安
- 第13回専業トレーダーが税金上不利になる3つの理由
- 第14回大敗大勝のジンクスと損失繰越
- 第15回FX損益通算と金融所得課税の一体化問題
- 第16回国民年金・国民健康保険料 節約の一手
- 第17回必要経費と損失繰越で税金がこれだけ違う
- 第18回所得控除 税金を減らすポイントその2
- 第19回全額掛金控除 国民年金基金の資産効果
- 第20回専業トレーダーが確定拠出年金を始めた理由
- 第21回確定拠出年金 元本割れが気になったら読む記事
- 第22回税金還付をキャッシュバックと考えてみる
- 第23回確定拠出年金手数料まとめ
- 第24回確定拠出年金 給付手数料節約の小技
- 第25回運用商品と信託報酬のポイント
- 第26回配分変更とスイッチング
- 第27回元本確保型の欠点 インフレリスクとは
- 第28回インフレ時代の資産運用
- 第29回投資家の選択リスク
- 第30回ドルコスト平均法の効果と試練
- 第31回NISAに応用できるFX運用法
- 第32回ふるさと納税 2013
- 第33回ふるさと納税 手続きと手順
- 第34回FX税金2013 NEVERまとめ