FXオプション「買い」の夢と現実
FXオプションには4つの売買があります。その売買は「リスクとリターン」の関係からみると、大きく「買い」と「売り」に分かれます。まずは「買い」を中心に説明させていただきます。
FXオプション 4つの売買
前回まで、FXオプションのリスクについて少し詳しく書かせていただきました。今回より、具体的な売買に入らせていただきます。
まずは、FXオプションの種類の把握から始めます。
FXオプションには、「コール・オプション」と「プット・オプション」の2種類があります。
- コール・オプション=買う権利
- プット・オプション=売る権利
そして、それぞれに「買い」と「売り」のポジションが作れます。つまり、合計すると4種類の売買ができることになります。
- コール・オプションの買い
- プット・オプションの買い
- コール・オプションの売り
- プット・オプションの売り
「買い」には「コール・オプションの買い」と「プット・オプションの売り」があります。
同様に「売り」にも「コール・オプションの売り」と「プット・オプションの売り」があります。
FXオプションのリスクとリターンの取り方は、「売り」か「買い」かで決まります。
FXオプションの教科書などでは別の分類をしているのも多いのですが、実戦上はこういう分け方の方がわかりやすいだろうと思っています。
「買い」の2つを使い分けるだけでも、上げ相場でも下げ相場でも勝てます。同様に「売り」でも「コール・オプションの売り」と「プット・オプションの売り」を使い分けるだけで上げ相場でも下げ相場でも対応ができます。
FXオプション売買必須項目として、その大まかなリスクとリターンの取り方を把握しておく必要があります。
「買い」 夢に賭けるポジション
まずは「買い」の特徴です。先程の分類でいくと「コール・オプションの買い」と「プット・オプションの買い」がこの中に入ります。それぞれ以下の状況で利益が出ます。
- 上げ相場で利益を出すのが「コール・オプション買い」です。
- 下げ相場で利益を出すのが「プット・オプション買い」です。
「買い」の特徴は大きく3つあります。
- リスク限定
- リターン無限大の可能性
- 勝ちにくい仕掛けが多い
FXオプション「買い」のリスクは、オプション代金が損失上限となります。
仮にプレミアム0.5の米ドル円コール・オプション買いポジションを10万通貨保有した場合、その代金は以下の計算式になります。
- 0.5×10万通貨=5万円
リスクはこの金額が上限になります。
簡単に書けば「この後何が起きても5万円以上損をしない」ということです。
「コール・オプション買い」は米ドル円買い同様に上げ相場で利益を伸ばせるポジションです。
見込みが狂って5円も下落して損きりしなければ、FXの米ドル円買いポジション10万通貨では−50万円の損失を出すことになります。
こんな場合でも、FXオプションの損失は5万円を超えることはありません。
例え、異常相場で為替レートが大きく飛んだとしても、この損失上限は変わりません。
リスクが限定されているのに、FXオプションのリターンは、大きく取れる可能性があります。
先程の事例で、米ドル円がFXオプションの権利行使価格よりも5円上昇したとしましょう。
そうすると、理論上FXオプションのプレミアム代金は0.5⇒5以上になります。仮にプレミアム値が5になったとして、プレミアムの価値計算をしてみましょう。
- 5×10万通貨=50万円
5万円のFXオプションプレミアムが50万円に上昇すしたことになります。約45万円の利益です。5万円の投下資金からすると、約10倍になっています。
FXオプションの「買い」では、こういうことが現実に起きます。
ここまでだけを読めば「なんてすばらしい投資商品だ!」という気持ちになった方もいるかもしれません。逆に、冷静な方は「リスクとリタ−ンのバランスがおかしい」と疑問を持つかもしれません。
この疑問は、特徴の一番最後で解決します。
「勝ちにくい仕掛けが多い」
FXオプションの買いは、コール・オプションでもプット・オプションでもどの権利行使価格でも基本的に「売り」よりも勝ちにくくなります。
見込み通りに相場が動けば利益となるのですが、相場がほとんど動かないようなときは時間的価値などの関係で「買い」はなかなか勝てないのです。
FXオプションのプレミアムには、現実値に「ボラティリティ」「時間的価値」「金利」などをのせて算出された内容になっています。
「買い方」は時間の経過とともに、これらを負担する立場にあります。
逆の見方をすれば、これらは時間の経過とともにこれらの要素が「売り方の利益」になっていくというのがFXオプションの基本的な仕組みです。
プレミアムそのものにも「スプレッド」も存在しています。これは、「買い」でも「売り」でも負担する投資家共通のコスト部分です。
その性質上、プレミアム代金は「現実値よりも離れている権利行使価格」ほど安くなっていきます。
例えば、この原稿を書いている7月23日時点の米ドル円値は111.24円です。サクソバンク証券のFXオプションで上げ相場で利益の出る「コール・オプション買い」のプレミアムは以下のようになっています。
- 権利行使価格111.00円 0.892
- 権利行使価格111.50円 0.638
- 権利行使価格112.00円 0.444
- 権利行使価格113.00円 0.200
*全て期日8月8日。期日まであと2週間ちょっとです。
一番下の権利行使価格113円のプレミアムが一番安くなっているのが確認できると思います。0.200ですので10万通貨でも2万円程度で購入ができます。
これで権利行使価格よりも2円くらい円安になって米ドル円115円くらいになれば、このプレミアムは0.2の10倍の2.0くらいに上昇する可能性もあります。
でも、ちょっと待ってください。
米ドル円の現在値は111.24円です。権利行使価格の113円まで上昇するかどうかも微妙ですよね。
勢いがつけば115円も有り得るのですが、確実なんてものではありません。
こんな感じで、全体のバランスが取れています。
FXオプション「買い」の基本スタンス
FXオプション「買い」の使い方は、大きく2つに分かれると思われます。
- 大勝負:夢を買うならFXオプション「買い」
- 堅実な使い方:暴落懸念強いときに捨て駒的に使う
相場運用している中で「大勝負」をかけたくなる局面は必ず到来します。
ときには「資金を一気に10倍・100倍に増やしたい」なんて夢をかけたい気持ちになる時だってあります。
私もいずれそういう気持ちになるときがくるかもしれません。そうなった時にやりたいと思っていることがあります。
最後の大勝負は「オプション買い」で行く!
最後の大勝負とは、大損やらなにやらで相場運用が窮地に陥るようなときが将来きたときの「最後の一手」のことです。
損を重ねていき、取り返しのつかない金額になってくると、「最後の大勝負」に出たくなるものです。
ここで失敗すれば、「破産」あるいはそれに近い状態に陥る。こういう時は、大体最後は勝てないものでもあります。
これは、相場運用で失敗して最終的に全部なくなるときの基本パターンです。
他人からみれば「よせばいいのに」と言いたくなるところですが、本人には届きません。精神的に追い詰められてしまっているため、最後の大勝負をせずに終わることは出来ないという心境なのです。
私も数十年前に経験しています。
大損経験者の中にも、似たような経験お持ちの方がいるかもしれません。
こういう時の最後の勝負に「FXオプションの買いを使う」つもりでいます。
これは「最終破滅を防ぐ現実的な一手」でもあります。
なぜならFXオプション「買い」はリスクが限定されているからです。
先程のFXオプションプレミアム値では、権利行使価格113円の米ドル円買いポジションが0.200でした。
このコール・オプションを1000万通貨分購入してもそれに必要なプレミアム代金は、0.200×1000万=200万円です。
最後の勝負資金が、手元に残っている現金200万円であれば、この勝負ができます。
失敗すれば、200万円の損失で終了です。
FXの運用資金はこれで一旦終了となってしまうかもしれません。でも、これ以上の出費はありません。子供の教育資金など「絶対に運用してはいけないお金」に手を出してしまうようなことはしないで済みます。
万が一、米ドル円が115円くらいにでも上昇してくれれば、200⇒2000万円に増えることになります。
一方、FXで200万円を米ドル円買いで勝負したら保有できる数量はレバレッジ25倍でも40万通貨程度です。
111.24円で買った米ドル円が115円くらいまで上昇すれば、40万通貨で150万円くらいの利益にはなります。
FXとFXオプションでは爆発力が違います。先程、FXオプションであれば2000万円まで増える見込みなので、FXとは10倍の差がでています。
いずれにせよ、うまくいけば利益ですが、こういう心理的に追い詰められた勝負はかなり厳しいものです。
人間の心は弱いものです。
「強制ロスカットされたら終了させよう」と最初は決めていても、いざその瞬間になると「まだお金があるかもしれない。再度の望みに賭けよう」という気持ちになりがちです。
そうなると、将来のために絶対手を出してはいけない資金、例えば「生活費」「子供の教育費」などに手を出してしまいかねません。もしも、そういう資金を追加投入して、更に大きく下げていけば損失は200万円では収まりません。
中には自宅を担保にお金を借りる人だっています。
相場で失敗して借金まみれとなれば、離婚・家族離散という事態も生じやすくなります。
証券会社時代、そこまで追い詰められた投資家を沢山みてきました。
人間は本当に追いつめられると、いくところまでいかないと止まらないのです。
FXオプションでも追加資金投入したくなるリスクはあります。それでも「まずは期日まで待とう」といったブレーキが働きやすいので、FXよりも冷静になる余地があると感じます。
オプション「買い」は、先程のような一かバチかの勝負的な使い方だけではありません。基本的におすすめしたいのは、先程の後者の部分です。
堅実な使い方
「堅実な使い方:暴落懸念強いときに捨て駒的に使う」
こういう使い方です。
例えば、スワップ目的で豪ドル円買いポジションを保有しているとします。局面によっては、「底抜けするような暴落的な下げがありそうだ」というときもあります。
そういう時に、防衛策の一手として「豪ドル円プット・オプション買い」を入れたりする使い方です。
暴落懸念が杞憂に終われば、そのプット・オプション代金は損失となりますが、保有買いポジションでは暴落時の備えをしたことで安心して日々のスワップポイントを受取続けていけます。
トルコリラ円や南アフリカランド円などで、この使い方は更に有効だと思われます。
残念なことに、FXオプションでの取扱通貨には「USDZAR」と「USDTRY」はあるのですが、「トルコリラ円」などはありません。
ただ、「USDTRY」と「トルコリラ円」はかなり連動しているので、ヘッジ手段としてFXオプションを使う事は十分可能です。こういう使い方をすることで、FX運用にも余裕ができて安定した運用に繋がるだろうと思っています。
FXオプション攻略 2018年版 目次
- 第1回「暗黒時代に見えた希望」 FXオプション攻略2018版
- 第2回オプション取引終了理由とFXオプション25年ぶり再開理由
- 第3回FXオプションとは 違いをFXとFXオプション比較で解説
- 第4回FXとFXオプションの共通点と相違点
- 第5回FXオプション「買い」の夢と現実
- 第6回FXオプション「売り」の魔力
- 第7回コールオプション現実の売買画像と損益分岐点
- 第8回プットオプション リアル売買と損益分岐点計算方法
- 第9回FXオプションの税金2018
- 第10回FXオプション FXよりも有効な税金対策としての使い方
- 第11回FXオプション無税枠活用「運用通貨選定まで」 その1
- 第12回FXオプション無税枠活用「期日」「権利行使価格」選定 その2
- 第13回損きりルールで利益がでてしまう理由 〜FXオプション無税枠活用法 その3
- 第14回FXオプション 無税枠活用におけるギリギリの税金対策等について
- 第15回FXオプション そのほかの基礎知識
- 第16回FXオプション 開始7か月の運用成績
- 第17回ストラドルの買い 一見とても魅力的なFXオプション戦略編の落とし穴
- 第18回ストラドル売り FXオプションにおける短期と長期比較
- 第19回ストラングル戦略 ストラドル戦略との比較でみた特徴
- 第20回ストラングル戦略 FXオプションでの現実的な使い方
- 第21回カバードコール戦略 スワップ派に必須知識
- 第22回カバードコール FXでの現実的な使い方
- 第23回高金利通貨でのカバードコールの仕掛け方
- 第24回10倍狙いのFXオプション戦略
- 第25回「スポット」とは・・方法と効用
- 第26回FX底値狙い 失敗しても「お小遣い」が貰える戦略
- 第27回一見勝率50%のFXオプション買いポジション戦略
- 第28回為替相場 長期堤相場で使える「カバプー戦略」
- 第29回スワップポイント複利戦略 数十倍に増やすならこの選択肢
- 第30回スワップポイント振替機能を使ったFXオプション複利運用
- 第31回「捨て駒」と「本気玉」 FXオプション「買い」2つの戦略
- 第32回FX底値と上昇狙い戦略と魔法の杖
- 第33回FXオプション 米ドル円と豪ドル円での使い方