FXにおける安全策についての一考察
私もそうですが、FX運用で「安全」といった言葉をよく使います。この安全は、追い詰められたときにも使いがちな言葉なのですが、勝負の世界ではそれが裏目に出る原因になることもあります。
逃げの安全策は状況悪化を招くことがある
安全策と消極策は似て非なるものがある。逆転負けは、優勢を維持しようと安全策をとってしまうことによる場合が多い。安全勝ちの道を選んだばっかりに、逆に不運を呼びこんでいることもある。勝ったと思ったら実は負けだった。人生でも、最も気を付けなければいけないことの一つである。〜米長邦雄
米長棋士が「名人位」を獲得したときを振り返ったときの文章です。
4勝すれば名人となれる戦いで既に3勝して大手をかけた1戦、この戦いも途中まで相手の中原名人を追い詰めていきます。その中原名人が攻めの一手を打ってきたときに、米長棋士は「攻めをかわして逃げようか」という気持ちになります。
しかし、この安全策は消極的と判断して最も激しい攻めの一手を繰り出します。それから十四手で中原名人は投了し、米長棋士の名人位獲得が決まったのです。
もしも米長棋士が、あの局面で「消極的な安全策」をとっていたら勝負の行方は変わったのかも知れません。
これと似たような局面は、FX運用でもある気がします。
私が連想したのは、「含み損が大きく膨らんだ局面」です。
- この局面が想定内なのか想定外なのかでも対応が違います。
- 想定内でも「損きり実行」となると心に抵抗がでてくることもあります。
- 想定外でどうしてよいかわからなくなることもあります。
次の一手次第ではFX運用が続けられなくなるくらいのダーメージになることもあります。米長棋士の名人位とはちょっと立場が違うものの勝負の時である点は同じです。
この局面で一番いけないと私が思っていることは、「心が逃げに入っているのに撤退しないこと」です。
この局面は非常にまずい。このままでは損がどんどん膨らみかねない。本来なら損きりすべきところだ。でも、損きりはしたくない。そうだ、まずは両建てで様子を見よう。
心理状態とポジション操作の代表例として挙げさせていただきました。
本来ならば損きりすべきと心の中では認めていながら、両建てに逃げてしまっています。こういう局面で両建てをすると、その後にはずすのにも苦労します。
両建てを片方ずつ外すのは、相場運用の高度テクニックの一つです。セミプロやプロが落ち着いた心理状態で両建てを外すのにも神経を使うのに、追い詰められた心理状態で両建てをうまく外すのはもともと至難の技なのです。
多くの場合、両建て後に更に損失を膨らませることになります。
では、どうするべきか。
私の場合。方針は決まっています。
目をつぶってでも「全部損きり」する。どうしても出来ないときは最低でも「半分損きり」
私もいまだに「全部損きり」には抵抗がでることがあります。でも、全部損きりできなくても半分なら出来るものです。
追い詰められないようなポジション操作をしていたはずなのに、追い詰められた訳なので、ここで逃げてはいけません。
まずは、敗北を認めてきっちり損きりをすることが「本当の安全策」でもあります。面白いもので、逃げの安全策を取らないようになると、運用成績も上がってきます。大きな流れを見誤ったと感じたときには、大切な決断となります。
万が一の備えもしっかりとしながら、日々1分の作業を続けています。