FXトレードの優位性が招く落とし穴
FXに限らずトレードの世界は、無限の可能性がある。だからこそ、学歴・身分・職業を問わずに誰でも成功することができます。誰でも参加できる自由市場がFXの大きな魅力でもあります。でも、誰もが成功できるわけではありません。自由であるが故に成功できないという側面もあります。
勝つために気づくべきこと
マ−ク・ダグラス著作「ゾーン」からの引用です。とある講演会での大手投資書籍出版社の編集者との会話です。
私は続けて、数年前に参加したセミナーの話をした。「ある人が次のような計算をしました。その計算によると債券先物、債券オプション、現物債券市場の組み合わせで、80億通りをこえるスプレッド(サヤ取り)組み合わせができるのだそうです。これに大局的相場に基づいたタイミングの取り方を加えるとトレード方法は事実上、無限にあることになります。」
これに対して、編集者は「なぜそうした無限の環境にアクセスすると、結局は失敗してしまうのでしょう?」と聞き返します。
それは無限の可能性のうえに、その可能性から優位性を得ようとする際限のない自由が加わり、個人に独特で特殊な心理的挑戦をもたらすからです。こうした挑戦を把握して、きちんとそれを処理しようと準備をしている人はごくわずかであり、ほとんどの人はそのことにすら気づいていません。その問題に気づきもしなければ、それを克服できるわけがありません。
この会話には、多くのトレーダーが「なぜ利益を出せるようになるために苦労するのか」が書かれています。
復習をかねて私なりの解釈を加えさせていただきます。まず、最初の会話の大きな部分はここです。
- トレード方法は事実上、無限にある。
ここでは、サヤ取りを例に説明されています。日本では特殊な取引であるサヤ取りですが、米国では「スプレッド取引」として一般投資家も利用するかなり普通の取引形態です。
このサヤ取りだけでも80億通りの組み合わせがあり、更に個人的な仕掛けや決済の方法も考慮すれば、トレード方法=運用法は無限にあると書いています。
現実には、スキャルピングなどのサヤ取り以外の取引方法などいろんな運用法があるので無限の幅はさらに大きなものになります。
私のメルマガでも、儲ける運用法は世の中に無限にあるとよく書いています。この著者も同様の認識であり、儲かる運用法以上に儲からない運用法が圧倒的に多いというのも共通しています。
後半の文章では、その儲からない理由について述べています。
- 無限の可能性
- その可能性から優位性を得ようとする際限のない自由が加わり
- 個人に独特で特殊な心理的挑戦をもたらす。
無限の可能性と際限のない自由については、説明はいらないかもしれません。FXトレードの世界には無限の可能性があり、どんなトレードをしようとそれはトレーダーの自由です。
でも「個人に独特で特殊な心理的挑戦」って何だろうって思われたかもしれません。
これは、「運用を自分用にアレンジ」するという意味です。
視点を変えて書くと、「運用法の基本原則どおりにやらないで最初から自己用に改良してしまう行為」ともいうことです。
こういう自己流のアレンジを、運用法実践の初期の段階でやってしまう方が非常に多いのです。私たちのやっている「サヤすべり取り」や「サヤ取り」でもよくあります。
これやると、安定した利益を出せるようになるまで時間がかかることになります。
こうなってしまう理由は、とても単純です。
実践を続けることでしか身につかない基礎
正しい運用法の基礎部分修得にはそれなりに時間がかかります。各運用法にはそれぞれ基本部分があります。それを頭で理解するのはそれほど時間がかかりません。でも、それを自分のものにするまでは数ヶ月〜数年の期間を要するのが普通です。
この部分は、スポーツとよく似ています。
サッカーを始めるときに本を読めばサッカーのルールやボールの蹴り方など基本的なことはわかります。
でも、チームに入りレギュラーとなり試合に出場して、大会で優勝するレベルまでいくにはかなりの練習が必要です。
サッカーチームで、コーチや監督の教えに従いみっちりと練習していった人ほど上手になっていきます。
正しい運用法の技術もそれと似たような流れで修得していきます。
自分でアレンジできるようになるのは、その基本事項を修得してある安定した利益が出せるようになってからです。
サッカーの世界であれば、コーチが教えたことと違うことをやっていれば怒られるのが普通ですし、場合によってはチームを辞めさせられてしまいます。
でも、投資の世界では誰も叱ってはくれません。
このため、正しい運用法を独自にアレンジしていても誰も注意はしてくれません。本人は「こうすればもっと利益が出る」と真剣に考えてやっているので止めようがなくなってしまいます。
正しい運用法といえど、基本事項を守らなければうまくはいきません。
でも、対処法はあります。
それは、定期的に自分の運用法を確認する場をもうけることです。自分自身でおこなうセルフチェックのようなものです。
自分の実践する運用法の基本部分がしっかりと守れているかどうかを、定期的に確認する習慣をつくるということです。この習慣を身に着けていけば、少し道がずれていても軌道修正していくことができます。
結果として、大きな失敗を防ぐことにも繋がります。
私自身、基本事項からはずれていないかどうかは定期的に意識するようにしています。実際のところ、毎年のように「ここがいかんなぁ」という部分があったりします。なので、読者のどういう行動を「そりゃあいかんえ!」としかる資格はないと思っています。
ここは、私が出来るのは私の運用する姿をお見せすることくらいなのだといつも感じる所以でもあります。