FXオプション「売り」の魔力
前回は「オプション買いの魅力」についてまとめました。今回は「売り」の特徴についてです。
FXオプション「売り」の種類と特徴
「売り」には、「コール・オプションの売り」と「プット・オプションの売り」があります。
- コール・オプション売り:下げ相場で利益となるポジション
- プット・オプション売り:上げ相場で利益となるポジション
「買い」と同様、「売り」でも上げ相場・下げ相場ともに利益を狙えるポジションを取れます。「買い」とは、その利益の取り方が違ってきます。「売り」の特徴も3つあります。
- リスク無限大(FXよりはリスク少し低い)
- 利益限定
- 勝ち易い仕掛けが多い
FXオプションの「売り」はリスク無限大というのが大きな特徴です。
無限大という言葉だけで「どれだけ大損するんだ」と底知れぬ恐怖心のようなものを感じるかもしれません。
現実には、FX経験者であれば恐怖心を感じるというほどのものえはありません。
これは、自分で計算してみるとわかります。
仮にプレミアム0.5の米ドル円コール・オプション売りポジションを10万通貨保有したとしましょう。そのプレミアム代金は以下のようになります。
- 0.5×10万通貨=5万円
この計算式、前回の「買い」のときと同じです。「買い」のときはこの5万円を支払う側でしたが、「売り」のときはこの5万円を受け取る側になります。
「5万円受け取って、その後のリスクを負う」
これが「売り方」のリスクの中身です。
ちなみに、この5万円が利益上限となります。この後、米ドル円がどれだけ下げても利益が5万円を超えることはありません。
コール・オプション売りは「下げ相場で利益」となるポジションです。「上げ相場」では損失となります。
仮に、この後米ドル円が上昇して権利行使価格よりも5円程度高くなったとしましょう。そうなると、プレミアム値も理論的には5以上となります。
5まで上昇すると、コール・オプション売りの損失は以下のような感じになります。
- (5ー0.5)×10万通貨=45万円の損失
プレミアム0.5で売ったポジションが5に上昇したのでその差額分が損失となります。
これが、FXオプション教科書で「リスク無限大」と書かれている中身です。
冷静にみればFXと同等なので、FXのリスクに慣れている方であれば無暗に怖がる必要はありません。
そして、既にお気づきかもしれませんが、現実にはこのリスクFXよりは低くなります。
この記事では、下げ相場で利益を出せるFXポジション1つとFXオプションポジション2種類の合計3種類を比較しています。
比較表のなかで損失となる水準も入れてあるのですが、3つの中でFXが最も大きな損失を受ける可能性があることが確認できるはずです。
「利益が限定」されて「損失は大きくでるかもしれない」というのが「売り」のリスクとリターンの特徴です。これだけ見れば、「売りなんて魅力ない」と思ってしまいます。
でも、オプションを使い慣れている人ほどポジションは「売り中心」となります。
このカラクリは、最後の特徴にあります。
- 「勝ち易い仕掛けが多い」
FXの「買い」と「売り」で勝てるかどうかの単純な確率は約50%です。FXオプションでは、この確率を大きく動かすことができます。
「米ドル円110円で権利行使価格113円のコール・オプション売り」
こういうポジションが普通にとれるからです。
113円のコール・オプション売りということは、期日に113円以下であればプレミアム代金を全額利益として受け取れるというポジションです。
これ、確率的に勝ち易いですよね。
このポジション、米ドル円が現在値近辺で往来を続ければ勝ちです。
仮に米ドル円が上昇しても3円上げまでの余裕があります。
やってみるとわかりますが、かなりの確率で「売り」は勝てます。私の売買記録を「買い」と「売り」でまとめた記事もご覧ください。
「売り」が勝ち易いという傾向がはっきりとでています。私の使い方がちょっと極端なところもあるのですが、おそらくほとんどの方が「売りの方が勝率が良い」という形になるはずです。
「売り」の使い方
- 単独で使うなら「損きりルール」必須
- FXとの合成ポジションがおすすめ
FXオプションで失敗した事例のほぼ100%が「売り」であることは既に書きました。FXと同等以下とはいえ、このリスクを甘く見ることはできません。
なので、単独でFXオプション「売り」を仕掛けるのであれば、損きりルール設定は必須とお考え下さい。
こうしておかないと、相場が想定外の動きを始めたときに大惨事が起きかねません。。
「損きり」なしでFXオプションを使うのであれば、「売り」はしないで「買い」に専念した方が良いです。
私が、おすすめしたいのは「保有FXポジションとの合成ポジション」です。
例えば、豪ドル円の買いポジションを80円で20万通貨保有しているとします。
利益確定目標値が100円前後でそれまでは売る予定がないという方針で長期保有中だとしましょう。
ところが、豪ドル円90円くらいで利益確定目標値に届かずにそろそろ「下げ転換」しそうになってきました。
このまま見ていれば、そのまま豪ドル円はそのまま下げていって、スワップポイントを受取ながら次の上げ相場を待つというだけで終わります。
こういう時に、「豪ドル円コール・オプション売り20万通貨」を入れてみます。このプレミアムが仮に0.5であれば、0.5×20万通貨=10万円を利益として受け取れます。
FXポジションは、そのままですので、下げた後に再び上昇期となればスワップポイントも貯まり利益も貯まり始めるといういつもの展開になります。
無論、「下げると思ったけれど、現実にはそのまま上昇した」ということもあるでしょう。その場合は、コール・オプション売りポジションは含み損を負う可能性があります。
でも、FXの豪ドル円買いポジションは上昇により利益が膨らんでいます。
FXとFXオプションの合計損益で見れば、想定外の上げ相場となっても損失が膨らむような事態は避けられます。
この使い方は、「カバード・コール」と呼ばれています。
いずれ詳しく書かせて頂きますが、FX+FXオプションという使い方をすることでストレスを減らした運用体制を確立していくこともできます。
FX+FXオプションの合成ポジションは、主要な戦略とされているものだけでも相当あります。
全部試すことは出来ないので「有効そうな」ものを中心に試しているところです。私が試した戦略のやり方などは、今後も記事にまとめていく予定です。
FXオプション攻略 2018年版 目次
- 第1回「暗黒時代に見えた希望」 FXオプション攻略2018版
- 第2回オプション取引終了理由とFXオプション25年ぶり再開理由
- 第3回FXオプションとは 違いをFXとFXオプション比較で解説
- 第4回FXとFXオプションの共通点と相違点
- 第5回FXオプション「買い」の夢と現実
- 第6回FXオプション「売り」の魔力
- 第7回コールオプション現実の売買画像と損益分岐点
- 第8回プットオプション リアル売買と損益分岐点計算方法
- 第9回FXオプションの税金2018
- 第10回FXオプション FXよりも有効な税金対策としての使い方
- 第11回FXオプション無税枠活用「運用通貨選定まで」 その1
- 第12回FXオプション無税枠活用「期日」「権利行使価格」選定 その2
- 第13回損きりルールで利益がでてしまう理由 〜FXオプション無税枠活用法 その3
- 第14回FXオプション 無税枠活用におけるギリギリの税金対策等について
- 第15回FXオプション そのほかの基礎知識
- 第16回FXオプション 開始7か月の運用成績
- 第17回ストラドルの買い 一見とても魅力的なFXオプション戦略編の落とし穴
- 第18回ストラドル売り FXオプションにおける短期と長期比較
- 第19回ストラングル戦略 ストラドル戦略との比較でみた特徴
- 第20回ストラングル戦略 FXオプションでの現実的な使い方
- 第21回カバードコール戦略 スワップ派に必須知識
- 第22回カバードコール FXでの現実的な使い方
- 第23回高金利通貨でのカバードコールの仕掛け方
- 第24回10倍狙いのFXオプション戦略
- 第25回「スポット」とは・・方法と効用
- 第26回FX底値狙い 失敗しても「お小遣い」が貰える戦略
- 第27回一見勝率50%のFXオプション買いポジション戦略
- 第28回為替相場 長期堤相場で使える「カバプー戦略」
- 第29回スワップポイント複利戦略 数十倍に増やすならこの選択肢
- 第30回スワップポイント振替機能を使ったFXオプション複利運用
- 第31回「捨て駒」と「本気玉」 FXオプション「買い」2つの戦略
- 第32回FX底値と上昇狙い戦略と魔法の杖
- 第33回FXオプション 米ドル円と豪ドル円での使い方